神戸新聞夕刊「論説さろん」無恥というか無知というか

 新聞については、やはり偏見があります。「インテリが作りヤクザが売る」と思っていました。しかし11月20日付けの標記のコラム「TPPと兵庫」を読んで、恥ずかしいと思ったら原稿はかけないのだな、と思いました。
 TPPとは「環太平洋連携協定」という貿易の関税や規制を取っ払う協定のこと。コラムは、これのマイナス面を「農業が大きな影響を受ける」だの、コメ農家は「壊滅的な打撃を受ける可能性が高い」「日本経済にとって、諸刃の剣」「貿易振興と農業保護。中央と地方」と小泉ばりの脅しと偽の対立をあおる。最後は「TPPへの反発は強まるばかりだ」と心配をしている。とても中立的な言説ではないし、TPPの本質的な問題を覆い隠し、ジャーナリストとして国民が判断するべき課題を示すこともしない。
 神戸新聞は11月18日付「針路21 TPP農業壊滅への秒読み」(客員論説委員 内橋克人氏)で、「国民の生存権を脅かす」とその危険性を明らかにしているが、これはそれをすべて打ち消すような、日本の利益にならず無意味で税金を食うだけの「農業保護続けるのか」という財界や売国的な経済学者と同様の論調である。
 しかし仮に農業保護があったとして、これほど失業者が多いのに農業従事者が減っていく現状をどう説明するのだろう。厳しい政治の世界で世襲的な二世議員がどんどん出てくるのに、手厚い保護を受けている農業、誰もが大事だと言う食糧自給、食料主権の担い手が減るのはなぜだろう。
 いい加減な欺瞞的な言説を流すのは新聞の信用に関わる。神戸新聞は11月9日付の社説で「TPP基本方針 国民的議論につなげねば」という見出しで、「国民が賛否を判断できる十分な情報がない」という。この問題は「農業や貿易だけでなく、地域社会のあり方などにも大きく関わるテーマだ」という。
 しかし神戸新聞は11月の新聞でTPPの特集を組んでいないと思う。TPPと言う言葉はAPEC関連の報道記事でたくさん出てくるが、その本質に迫る記事はない。社説は政府に、その情報を出すように言っているのだろう。国民的な重要な課題と理解しながらも、新聞自らが調査をしたり研究者の取材をしようとしないのだろうか。
 あるいは、政府は食料主権を放棄してもアメリカに追従する姿勢だが、神戸新聞はそれには無批判と言う姿勢だろうか。内橋さんの記事は無花果の葉っぱだろうか。政府発表は載せても農業関係者や食料の安全考える研究者の意見を一切載せないのは、御用新聞でいいと思っているからだろう。
 だから(藤)という論説委員は無恥だと思う。