「女は何を欲望するか?」内田樹 径書房

 好きな人ははまるだろうと思う。それほど内田樹は面白い。この本はフェミニズムについて彼の考えを述べたものだ。
 まえがきで「フェミニズムは、その歴史的使命を果たし終えて」射ると明言している。そんなにあっさりしているから、ある種の人から嫌われる、というのもわかる。
 しかし私はジェンダーの問題はこれから解明され、社会を変えていくと思う。それが今のフェミニズムの理論に基づいて行われるかどうかはわからない。
 この本で私が最も過激に反応したのは次のくだりだ。
 「デルフィによれば、社会の二極化への分割は(そう信じられているのとは逆に)階層分化→分業→ジェンダーの差異化→セックスの差異化という順に進んでいる。生物学的性差は差別の「起源」ではなく、「階級」社会のイデオロギー的「産物だった」
 これは「フェミニズム映画論」として映画『エイリアン』シリーズの主人公リプリーとエイリアンの関係を解明する中で、引用される。惟は非常に面白う映画批評だと思う。映画作家が面白いもの斬新なものを作ろうとしても、それは人類社会の中のさまざまなものがたりのパターンに収斂するということである。それを専門家の目から見た分析を試みている。それは「そうだろうなあ」と納得させる面白さを持っていた。
 もちろんこの本はそれだけにとどまっていない。興味のある人は読んで下さい。