神戸新聞「識者評論 TPP交渉(上)(中)(下)」

 昨年の新聞から、色々と紹介しようと思っていたが、連日、全国紙などをざっと読んでいると、どうしても気になることが書いてあり、それを先に言っておこうと思ってしまう。
 これはTPP(環太平洋連携協定)について、1月26日27日28日と賛成二人、反対一人の論評を載せたものだ。マスコミの言う「中立」は欺瞞的だが、これは最初から賛成の論評を載せるための企画であろう。しかし、それは成功しなかった。私にはTPP推進者のばかさ加減がはっきりしたと思えた。
 ここに登場するのは、いつもマスコミが批判している「天下り官僚」(東大法学部、高級官僚そして財団法人)が賛成をいう。反対は農業・作家である山下惣一さん(中卒)です。
 賛成する二人は、一人は農林省出身で反対する農業者に対して農家に補助金を直接払いをすれば良いという、もう一人は通産省出身で、何の根拠もなく専業農家を優遇すれば農業ビジネスは輸出できるという。まったく無責任きわまりない。
 山下さんは、これまで農作物の自由化を進めて、農業は盛んになり地方経済は改善されていったのか、という。事実を見ればあきらかで「目先の損得勘定だけで農業をやっているわけではない。だからこそ辛うじて村と農業が維持されている」という言葉をなんと聴く。
 農作物の輸出に対しては、「日本の安全で高品質の農産物を中国などの富裕層に輸出して稼げ、という。これは裏を返せば日本の低所得層は中国の安い米を食えということだ」と喝破する。
 元農林官僚は「食料品価格の低下はリストラなどで所得が低下し生活に困っている人たちには朗報となろう」という差別的なものの言い方は、その人柄を良くあらわしている。彼は「輸出によって海外市場を開発しなければ食糧安全保障は確保できない」ともいう。地球全体の人類の食料を確保するにはどうすればいいか、など考えたこともないのだろう。
 元通産官僚は「世界同時不況の克服」「WTO交渉の活性化」「地球温暖化交渉の加速化が期待される」というが、それはまったく根拠がない。自由化を促進させてきたグローバル経済は、環境を破壊し地方経済を疲弊させている。
 彼が言いたいのは、多国籍企業が栄えればいいというものだ。
 TPPは菅首相が「第3の開国」などといって積極的に推進しようとしている。彼は財界とアメリカに屈服しているから、そうするだろうと思う。しかし、それは山下さんが言うように「虚構の論理はいつか破綻する。しかしTPPに関してはそれでは手遅れなのだ」という危機感は、私も共鳴する。
 TPPについては、また書くと思う。みなさんにも関心を持ってもらいたい。