「ふたたびの虹」柴田よしき

 よその町に行ってぶらぶらと商店街を歩いていて、古本屋を見ると必ずといってよいほど、店を覗きます。日本全国、出回っている本にそう大きな違いはないので、その地方の「特産」などというものはないのですが、古本屋が好きなのです。(そんなことはなかった。昔八戸に行ったとき、津川武一さんのエッセイ集を見つけた)
 それで気に入った本があると、荷物になるのがわかっていながら買ってしまいます。それで後悔はしないのですが、手元にあるだけでなかなか読む順番が回ってこない本が増えたということになります。
 この夏、広島と奈良に行きましたが、全部で5冊も買ってしまいました。そのうち3冊は読みました。その1冊がこれです。前にも書きましたが柴田よしきさんは贔屓にしています。図書館で借りる本にたいてい入っています。
恋愛ミステリー
 帯に、そのようなキャッチコピーが入っています。大傑作という類の本格ミステリーでもなく、ほんわかとした大人の恋心、とでも言うのでしょうか。自分ひとりで京風の家庭料理屋を切り回す、ちょっと色っぽい、わけありの女将、という私にはたまらない主人公を設定しているものですから、買ってしまいました。
 7つの短編連作ですから、お風呂読書の1週間で読み終えました。
 この家庭料理屋はオフィス街にあって、仕事帰りのサラリーマン、ウーマンがお客です。全体に無口ですが、色々な事情を持った人々がやってきて、時には殺人事件などもあるのですが、そう激しいものはありません。
 例えば、クリスマスの嫌いなOLの話、親を殺した男と結婚した女の話。緑色をした花をつける桜に絡む話。
 一つ一つの話によって、少しずつ女将や女将の周りの人々の過去の断片が現れてきて、最後に女将の過去も明らかになります。そしてハッピーエンドです。
 謎の過去を背負った人間の魅力をうまく出しています。ご希望があればお貸しします。