避難勧告と避難指示

 紀伊半島に大きな水害が生じた。今日9日にNHKが特集を組んでいた。それを半分ぐらい見た。半分ぐらいだから、あまり偉そうにはいえないのだが、この放送は、今回の被害をどのように報道しようと思ったのだろうと、大いに疑問がわいた。それであまり考えもせず、ブログにその疑問、怒りを書いている。
 避難勧告を出せなかった自治体、その背景にある住民の感覚に対して、本質的な問題に踏み込まない報道であった。
 「狼少年」という言葉があった。「うそ」の情報という意味だ。しかし、それがこの被害の本質だろうか。違うと思う。
 避難所が遠い、というのが問題の一つだ。多少の雨で避難するのは大変だ。たいしたことない雨であれば、避難したくない。だから安全な避難所は近くに作る必要がある。
 二つ目には、自治体の判断を求めることだ。避難勧告を出すのは市町村長だ。しかし自治体にどれだけの人材がいるのか。「情報は多い」というが、そこから判断するに足りる情報を見分ける能力、数ある情報を組み合わせ、仕分ける能力、そして現場の知識を職員は持っているのか。
 国は市町村合併を進めてきたが、それが役に立ったのか、むしろそれが被害を大きくしたのか、検証が必要だ。それがどうであっても都道府県の役割が重要であることが明確になっている。
 三つ目には自治体の役割は重要だが、それに対応できる職員がいるのか。市町村合併で区域は広がる一方だが、地域に対応する市庁舎は1箇所に集められている。そして職員が減らされる。それが日本の常識だ。
 合併当初は、それまでの市町村庁舎は守られるが、少し経つと、それらは整理統合される。「効率」的な行政を行うために「選択と集中」が実施される。事業仕分けだ。
 その時、大規模災害は、ごくたまにしか発生しないから、それに備えることは「効率的」ではない。まして被害が大きそうな地域には、いわゆる「有力者」は住んでいない。
 こういった問題から出てくるのは、自治体の職員が少ないということだ。人口割合の公務員数は、先進資本主義国で比較すると、フランスやドイツの半分、アメリカの7割ぐらいだ。この事実は国民に言うべきだろう。
 しかも、今後はいっそうの異常気象の時代であるから自然災害は増える。これまで経験しない豪雨や地震は必ず発生する。それに対応する自治体を作るには、それ相応の住民負担は必要ということだ。あるいは、そういう職員を育てるための自治体政策が必要と思う。
 NHKの番組は、そういったことは一切言わない。