朝日新聞は財界の犬になった(11月8日社説)

朝日新聞の正体
 新聞社の方針と紙面、記事は必ずしも一致しない。しかし社説は新聞の方針を書くものと理解している。ということであるなら、11月8日朝日新聞社説「どうするTPP 交渉参加で日本を前へ」はTPPの問題で日本全体の世論が反対「慎重」論に傾きかけている状況の中で、朝日新聞はこれを推し進めようとしている財界の期待に応える社説を書いた。
 「反対派に、業界の利益を守る思惑はないか」と書いた。同じように反対派を批判した仙石元官房長官の反対派を「宗教」と批判したことと通じる。卑しくも言論を扱う人の言う言葉ではない。それを言うなら朝日新聞はTPPを強引に進める財界、多国籍業の利益を守るために身を呈しているのだろう。
 私は、TPPを反対する人はこれを読んで少なくとも朝日新聞の購読をやめるべきだ、と思う。そうしないと彼らはますます財界の方針に従っていくだろう。
社説の論旨
 TPPは「関税引き下げだけでなく、医療や郵政、金融、食の安全、環境等、様々な分野の規制緩和につながる可能性がある」という。だから国民の多くは、議論が出来ていないといっている。朝日新聞は「まず交渉に参加するべきだ」という。TPPが日本をどういう社会に導くかということにはまったく言及しない。影響が大きい農業問題に対しても、その対策を示さない。経営規模の拡大や個別所得保障制度の見直し、という言葉を使っているが、政策的なものはない。規制緩和についても「安全・安心な生活を守るため、安全安心な生活を守るため、必要な規制を維持するのは当然だ」といいながら、その対策は言わない。
 ただ「日本も、激変緩和のための例外措置を確保できる余地はある」という、何の根拠もない無責任な言い抜けをしている。
 ここで展開しているのは、TPP批判に対する回答は一切なく、財界が言う「自由貿易」こそが日本を発展させるという「宗教」のお題目だけだ。
国民生活が基礎
 この記事を書いた論説委員も気づいているのでしょう。TPP参加のメリットは、自由貿易で利益を受ける大企業・多国籍企業だけであること、米国の強い要求であること、その被害は地域経済と国民生活全体に及ぶこと。それを明確には書かないジャーナリズムは「亡国のジャーナリズム」だ。
 この社説は反グローバリズムや反市場主義、反格差拡大であることを、正直に言っている。国民生活が豊かになる、とは一切いわない。ですが、それをなるべくわかりにくくしようという努力をしているのはありありとわかる。
 朝日新聞は、民主党代表選挙では小沢氏を批判し、菅政権末期には菅首相が無能であるかのように批判した。現野田政権については、それほど批判しないというよりも支えようという姿勢だ。
 野田政権の特徴は、国民生活に背を向けて財界と米国の要求に応えることをあからさまにしていることだ。消費税増税を「国際公約」といい、公約違反にもかかわらず事前に国民の真を問わないとまで言っている。
 そういう政権に対して、朝日新聞は一切批判しない。これは民主主義という言葉が好きで「左派」という評価を受けている新聞にしては驚くべき態度だ。
 現場の記者には厳しいかもしれないが、実はこれが、この新聞の基本姿勢であると思う。