21日久々に芝居らしい芝居を見た。神戸医療生協主催で前進座の芝居だった。さすがに個々の俳優が非常に芸達者な感じがした。
『毛抜』は歌舞伎十八番の一つ、『水沢の一夜』は幕末に活躍した高野長英の一晩のエピソードだ。両方とも、味の違ういい芝居だった。両方とも嵐芳三郎の熱演が光った。
断っておかなければならないが、高野長英は幕末の蘭学者ということと名前ぐらいしか知らない。
まず『水沢の一夜』だが幕府に追われた長英が生まれ故郷の水沢に舞い戻ってきて、母の家を訪ねるという話だ。
幕府の命令で藩が高野長英を捕まえるために山狩りをする。一方で長英を慕った若者が、長英を捜索を妨害しようとする。
長英が隠れる母の家に、藩の捜索隊に鉄砲で撃たれた若者が運び込まれる。長英は正体がばれるのを覚悟で、その傷の手当をする。まったくくさい話だが、これが面白い。芳三郎がつくる長英像がひどく魅力的だった。
そこに患者が居れば身を賭してでも助けるという、医療生協を体現するような芝居だった。
もう一つの『毛抜』はころっと違う、歌舞伎の面白さ満載だった。
勧善懲悪の典型で、主家を転覆させようという悪家老のたくらみを、快男児が者の見事に見抜いて、逆転勝利という奴だ。
それにしても嵐芳三郎はこんなに違う役を見事に演じていた
小野春風
高野長英