読売ジャイアンツの6選手契約問題

 馬鹿馬鹿しいとは言っていられない。
 ジャイアンツが新人選手の契約金をプロ野球球団が申し合わせた標準額を大きく超えて契約した問題だ。
プロ野球選手にはプライバシーはない
 野球界は野球界として考えればいい問題だが、実名が新聞報道されたことに対して、どう考えるのかということだ。よく考えれば球団と選手の契約の問題は個人のプライバシーに関わることであり、それを一業界団体の内部のルールに違反する疑いがあるからといって、実名を報道する必要性があるのか、と思う。
 はっきり言って核密約問題とはレベルが違う。これにこんなに大きく紙面を割き、繰り返しキャンペーンするのなら、他にもっと大事で言うべき問題はあると思う。
 それはおいて置いて、相撲界の八百長事件のように、これは社会的な問題だというのだろうか。確かにプロ野球は、スポーツ新聞がほとんどの紙面を割いて、結果や内容分析、選手の動向などを報道いるように、日本の社会に根を下ろしている。それは一業界の問題という、ことではない、と思う。だから選手のプライバシーは守らなくてもいい、ということだろう。
 朝日新聞が大きく報道し、他紙もそれに追随して報道した。唯一読売新聞だけが、それに抗議しているように思う。3月20日の紙面では長嶋元監督まで引っ張り出してまで、[朝日]の報道を抗議している。
 長嶋さんは「実名を出された選手の傷は簡単にはいえない」などといっている。痴漢容疑や飲酒運転で名前を出されることを思えば、こんなことに名前を出されても、そんなに傷つくとは思えない。そう思うぐらいなら、ルールを大きく上回るお金を貰わなければいい。半分公人であるのなら、これはまさに自己責任の範疇ではないか。
社会の公器
 これを新聞の社会的責任の問題として考えると、どうなるか。少なくとも他の新聞社に関わる問題をライバル新聞が批判することはとてもいいことだと思う。それもはっきりと、プロ野球界にとって悪いことだと判断を下すことは、いつも曖昧な新聞にしたら画期的な論調だ。
 その[朝日]に対して[読売]は、この報道に対して正面から反論はしない。ジャイアンツがやったことはいいことだとは書いていない。球団の言い分をそのまま乗せたり、それを弁護する関係者のコメントを寄せ集めて「違反ではない」ことを印象付ける記事を書いているだけだ。
 [朝日]が昔のことを開幕前に持ち出したことに批判している。
 しかし[読売]は、ここまで事実が明らかになったのだから、ジャイアンツが行ったことは、プロ野球として社会的に許されることかどうかを、自社の責任においてはっきりと言うべきだろう。それが新聞社として、自分の関連会社に対する責任のとり方だろう。
 [読売]が公務員の「厚遇」や些細な違反に対しても、最も厳しい報道をするから、そういっているわけではない、つもりだ。
プロ野球には道徳はない
 昔、政治家に道徳を求めるのは魚屋で野菜を買うようなもんだ、と言った人がいた。(表現が違うかもしれないが)プロ野球機構は、コミッショナーも「現時点で何らかの措置をとることを考えていない」といっている。
 標準額が1億円と決めていて、10億円を払うことは、私の知る常識ではルールに反していると思う。だからプロ野球機構は自分で決めたルールを守らなくてもいいという団体であり、プロ野球に道徳とかフェアプレイを求めることは大きな間違いだということがまたまたはっきりした。
 確かに業界内の申し合わせだから、紳士協定だ。紳士なら守るべきだと思う。しかしいまだに「正力」などという売国奴を冠にした賞を最高栄誉としている恥知らずだから仕方がないか。