『あなたへ』『わが母の記』『父の初七日』『プンサンゲ』『鍵泥棒のメソッド』『夢売るふたり』

9月末から10月にかけて見た映画です。今月は邦画が多くなりました。時期的な話題作とか上映時間的なこともありますが、見たいと思う映画もありました。しかし残念ながら、これはといえる映画はありませんでした。
あなたへ』は少しだけ期待したのですが、残念です。私は高倉健の大ファンですが、もう、このような役回りではなく、少しだけ出るような役で、ファンを楽しませてくれたら良いなと思います。



さらに言えばストーリーも、人柄の設定も、私が思う高倉健の役柄とは違うと思いました。
詳しいストーリとか論評は、色々出ていますから、そちらで映画全体のことは調べてください。ここでは、高倉健の役である倉島英二について書きます。
彼は長崎への旅、妻、洋子の遺骨を海に散骨した後、彼の職場である刑務所に退職願を送ります。私はそれが納得いきません。
倉島は40歳を過ぎて、慰問に来ていた洋子に惚れて妻にします。その後、彼は結婚の後、普通の刑務官から木工の指導技官(法務技官、作業専門官)に職を変わります。洋子も、あなたにはそれが相応しいといいます。
確かなことは言えませんが、いっそう受刑者の身近になり、社会復帰を手助けする職種であると思います。しかし相当の技術力が必要であり、その転身にはかなりの準備、自己の研鑽が必要であったと思います。
なぜそうしたか。英二は洋子の前の恋人(受刑者で、刑務所内で死亡)に対する想いがあったと思います。高倉健が扮する英二はそうであってしかるべきです。しかも、それをあまり周囲に気付かせずにやってのける人です。
倉島英二は周囲とは少し距離をおく人間でしょう。しかし信頼される人間だと思います。
刑務官にも色々な人間がいます。しかも労働組合を作れない職種であり、人間関係は表面的な職務上の付き合いになりがちです。その中で信頼できる人間を見極めるのは仕事に対する態度です。刑務官の場合は個々の受刑者と、刑務所の規則、法令の間で、どのような態度をとるのかで、その人間がわかります。
映画では倉島の姿は断片的で、よくわかりません。しかし40歳を超えて洋子と結婚し、指導技官になり、退職後も嘱託として勤める男です。直属の上司で、倉島の後輩に当たる長塚京三は彼を信頼しています。そこへなぜ帰らないのか、彼は妻を亡くした今、どこへ行こうとしているのか。私はわかりません。仲間こそが人生にとって最も大切なものであるというところに到達するのが、私の高倉健像です。
もちろん妻も大切です。でも彼女は死にました。ですから、やはり仲間がいる所に帰るのが、高倉健の扮する倉島です。

(続く)