2021年9月に見た映画その1

『ウォーデン消えた死刑囚』『ジャスト6.5闘いの証』『ビリーブ 未来への大逆転』『スイング・ステーツ』『アナザーラウンド』『人生の仕立て屋』『アイダは何処へ』の7本です。

 9月はけっこう面白い映画に出会いました。イラン映画二本、米国映画二本、デンマーク1本、ギリシア1本、ボスニア・ヘルツェゴヴィナ1本でした。結果的に邦画を見ていません。まず4本を紹介します。

 『ウォーデン消えた死刑囚』『ジャスト6.5闘いの証』はともにイラン映画で、2019年の東京国際映画祭で高く評価されました。前者はイスラム革命前の刑務所を描き。後者を現在の警察が主役です。

『ウォーデン消えた死刑囚』

 空港拡張工事のために刑務所の移転、受刑者全員の移送が行われます。バスが出発した後で、最後の点検をしていた刑務所長のもとに一人足りない、という連絡が入りました。

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 所長は、途中で逃げることは不可能であることから、行方不明の受刑者は、この刑務所に隠れているという判断をします。残った人数で刑務所をくまなく探し始めました。

 工事の期限があり、刑務所の明け渡しが迫ってきます。所長は昇進も決まっているし、こんな失敗で躓くわけにいかないと、だんだんと焦ってきます。受刑者を担当したソーシャルワーカー(美人で聡明、所長はちょっと魅かれている)を呼び寄せて、彼女にも協力させます。

 その受刑者は冤罪の可能性を持った死刑囚であることもわかります。

 この時代のイラン社会の雰囲気はわかりません。米国寄りのパーレビ国王ぐらいしか知らないのですが、独裁政権だと思います。所長が民主主義や人権をどう見ているのかも、はっきり描きませんが、最後に死刑囚を見逃しました。

 現在のイランは親米から反米のイスラム国家になっています。自由な政権批判は出来ない国だと知っていますが、欧米とは違う独自の文化も持っています。

 親米政権下の刑務所長の心の揺れは、現在の何かを批判している、と思いました。

『ジャスト6.5闘いの証』

 これは前代のイランで、警察と麻薬密売組織との闘いを描く映画です。麻薬対策チームの責任者と麻薬組織のボスがクローズアップされます。

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 かなり乱暴な捜査、すし詰めの拘置所、法外な儲けを挙げるボスの存在、麻薬を買う人々がかなり貧しい(スラムよりひどいゴミ置き場みたいなところに大勢が住んでいる)など、社会構造の一端を見せました。

 テンポが速いアクション映画の作りとなっていますが、マファアのように、ボスが家族思いであることを描きます。

 「6.5」は麻薬患者650万人という意味です。イランの人口8400万人ですから13人に一人という数字ですが、検閲のある国ですから、そんなに外れた数字ではないようです。

 裁判で、ボスが麻薬を安く売りさばいて、貧乏人にも買えるようになり患者を増やしているという批判がありました。アフガニスタンが麻薬の製造拠点であり、隣国であるイランに入りやすくなっています。

『ビリーブ 未来への大逆転』

 映画サークルの9月例会です。

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 米国最高裁判事であった故RBG(ルース・ベンダー・ギンズバーグ)の半生を描きました。米国は男女差別が厳しい社会ですが、それを変えていくために彼女はどのように闘ったのか、という映画です。

 会員外で法律事務所関係者に来ていただいたようです。RBGの評価の高さがわかります。

 映画は彼女の現状を変えていくスーパーヒロインぶりを描きました。もちろんそこには夫や家族の支援がありました。

 RBGは、夫が難病で倒れた後も、彼を支えながら学業に励み、ハーバード大学コロンビア大学の法科を極めて優秀な成績で卒業します。でも彼女が希望する法律事務所は雇ってくれません。大学の先生となり、学生と一緒に大杼差別のあるアメリカ社会を勉強していました。

 そして国を相手に男性を差別する法制度「介護費用の税控除」裁判を闘います。国は「男女を区別」するすべての法制度に影響すると、総力を挙げて裁判に臨みます。誰もが勝てない、と思いますが、彼女は「時代が変われば法律も変わるべき」「未来のために」という主張によって、保守的な裁判官を納得させました。

 映画はそれを感動的に描きました。

 いい映画です。時代は人の努力によって変えられるというものです。しかし私はちょっと引っかかりました。

 彼女の出自は貧しいユダヤ人ですが、結婚した相手は大金持ちだったようです。男女差別はあるもののアイビーリーグに代表される上流階級の一員です。

 能力の高さや努力の凄さが強調されますが、歴史を変える人々はそういう階級に担われていると、演出しているように感じました。ひがみ根性ですかね。

『スイング・ステーツ』

 政治的コメディ映画です。全く上手に作るものだと感心しました。「まつりごと」である選挙は人も金も動くお祭りの要素も持っています。

 西神ニュータウン9条の会HP10月号に紹介記事を投稿していますから読んでください。