2023年3月に読んだ本

『検証シベリア抑留/白井久也』『シベリア抑留は「過去」なのか/栗原俊雄』『流されて円楽に流れつくか圓生に/六代目円楽』『刑事の約束/薬丸岳』『昭和の戦争/保阪康正対談集』『師匠!/立川談四楼』『紋切型社会/武田砂鉄』『世界3月号』『前衛3月号』の7冊の本と2冊の雑誌です。

 2023年の最後のブログを書いておきます。2月に比べてちょっと多く、いずれもなかなか面白かったです。感想などを簡潔に書いていきますが、2回に分けます。後半は2024年に書きます。

『検証シベリア抑留/白井久也』『シベリア抑留は「過去」なのか/栗原俊雄』

 映画『ラーゲリより愛をこめて』を見ておかしいなと感じて、映画評を書こうとしましたが「シベリア抑留」自体をよく知らないので、関係図書を読んでみました。この2冊の他に『ダモイ遥かに/辺見じゅん』『シベリア抑留者たちの戦後/富田武』も借りましたが、そこまでは読み切ることは出来ませんでした。

 


 わかったことは、60万人の人々が最長11年もの長期にわたって、しかも6万人の人が死ぬという過酷な環境、強制労働である「シベリア抑留」がなぜ起きたのか、経過や実態など解明が不十分だということです。

 ソ連側の責任、特に独裁者スターリンが重大ですが、日本の明治以来の大陸侵略政策の帰結だということです。さらに言えば大日本帝国軍が天皇の軍隊、皇軍であるために棄民・棄兵という基本方針を持っていたこともあります。

 しかも私自身も含めて、広島、長崎の被爆体験に比べて、戦後の日本が国民全体の問題として「シベリア抑留」を知らないということです。

 そして、生き残った人々の努力で特別措置法が2010年に成立しましたが、ここでも朝鮮籍、台湾籍の人々は除外されています。

『流されて円楽に流れつくか圓生に/六代目円楽』

 六代目三遊亭円楽、前座名楽太郎の自伝です。ちょっと自分をよく書き過ぎているきらいはありますが、面白く読めました。青山学院大学卒ですから「おぼっちゃん」と思っていましたが大ちがいの貧しい長屋住まいの出でした。

 高校時代からバイト生活で、大学もほぼ自前で乗り切ったようです。それだけでもすごい人です。しかも全共闘の活動にも首を突っ込んでいたようです。

 笑点での政治批判は彼の資質ですね。

 落語もできるし笑点とかのバラエティ、博多や札幌の落語祭りのプロデュース等を見ると多方面の能力があります。今年、亡くなりましたがとても残念です。

 1978年に起きた落語協会分裂、三游協会設立の事が少し書かれていました。それで引き続き三遊亭円丈の『師匠、ご乱心』(4月に書きます)を読みました。

 この2冊を読んで、立場が違えば受け止め方も違うということがよくわかりました。

『刑事の約束/薬丸岳

 強行班担当刑事、夏目信人を中心とした連作短編集です。

 


 短編のタイトルは『無縁』『不惑』『被疑者死亡』『終の住処』『刑事の約束』ですが、どれもみなちょっと変わったミステリーです。犯人探しと言うよりも、犯罪の動機捜しとでもいったらいいのでしょう。

 夏目信人は、元刑務技官で少年鑑別所で働いていましたが、彼の娘が通り魔にあって植物人間となったのを機にして、犯人逮捕が出来る刑事に転職しています。そして娘の事件の犯人逮捕のあとは、無気力な刑事となりながら、捜査能力は抜群で署内でも一目おかれています。

 小説の書き方が、一つの視点だけでなく様々な人間に移っていくのは、ミステリーとしては読者を混乱させるもので、そこは私は良くないと思っています。でもなかなか面白い小説でした。

『無縁』

 少年が万引きで捕まりますが、本人は黙秘し、周辺の学校に紹介しても該当者がなく、彼がどこの誰かはわかりません。

不惑

 夏目の同窓生が、彼の婚約者を植物人間にした犯人復讐しようとします。それに気づいた夏目は、同窓生の心中を思いやり、新たな生きる道を示しました。

『被疑者死亡』

 殺人犯が刑事に追われて交通事故で死亡します。被疑者死亡で捜査は終了ですが、夏目は、彼の殺人の動機を探り当てて家族に伝えました。

『終の住処』

 88歳の老婆は認知症が進んでいました。その彼女が生活援助していたケースワーカーを階段から突き落とします。その動機を夏目は探し当てました・

『刑事の約束』

 親に虐待を受けてきた子供たちが大きくなり、その一人が母親を殺害したと自首してきます。