『もういいかい』『拝啓、愛してます』『利休にたずねよ』

最近見た映画です。いづれも良かったと思います。
『もういいかいは』ハンセン病患者に対する国家犯罪を暴いた映画でした。ものすごい人権蹂躙の歴史を静かに明きからにしました。

ハンセン病、らい病といったほうが、まだわかりよいかもしれません。皮膚細胞と末梢神経が破壊されていく病気ですが、不治の病のように思い込まされていました。そしてそういう国民の誤解の上に、この病気にかかった人々に対して一切の人権を奪うことが当然のように思い込まされていました。
彼らは国民の目が届かない所に隔離され、人間扱いされなかったという、骨になっても故郷に変えれないというようなことが、つい最近まであったと、告発しました。
しかし事実は違います。きわめて伝染力が弱い病気であり、特効薬も発見されていました。「重篤な後遺症を残すことも自らが感染源になることもない」にもかかわらず、いまだに誤解が広まったままだと思います。
日本政府は・・・。いや日本国民はやすやすと騙される「お上がなさることに間違いはありますまい」という国民なのかと、改めて思いました。
『拝啓、愛してます』は例会です。韓国の厳しい現実を、少しオブラートに包んだ映画でした。昔「少年は少女と出会った」というところから始まる映画がありましたが、これは、その少年を爺に変え、少女をばあさんに置き換えました。

だからときめきを呼ぶような映画ではありますが、あまり希望はありません。いい雰囲気になるのですが、その裏にある、若者と違って、老人には近い将来に寿命が尽きるという悲しさをもっています。
痴呆となった妻が死を迎える時に、心中を選択する老夫婦の描き方は、どうも納得がいきません。
それとこの映画は、韓国もそうだが、日本もそうで、貧乏な老人には生きやすい環境ではない、ということを、あまりはっきりと批判的に描きません。
利休にたずねよ千利休の生き様を描きました。市川海老蔵が主人公の利休を演じていますが、良い役者だと思いました。

利休は、あの当時、信長と秀吉の時代の第1級の文化人、美を定めた人間で在るといいます。そして同時にいかなる権力者に対しても、その説は曲げなかった、それゆえに殺された、という映画です。
彼は、権力者のそばで生きています。文化人、茶道という芸を窮める、高名な人間は、そこから離れなかった時代なのでしょう。
そうであっても、利休は最後の節は曲げなかった、と死んでいきます。
「特定秘密保全法」の時代では、権力に迎合する芸術家や研究者、文化人が増えていきます。競って電波芸者になり、権力者のお先棒を担ぐでしょう。攻めて利休のような生き方が求められる時代になってきそうです。