年末の新聞

12月は忙しくて、切抜きはしていたものの、それについて書くことが出来ませんでした。ちょっと時間ができたので、まとめて気づいた事を書きます。
特定秘密保全
同法は12月6日に成立しましたが、これを追及する新聞は、それでも後を追ってコラムを書いています。それを高く評価します。しかも気のせいかもしれませんが、例えばサンデーモーニングの岸井さんを始めジャーナリストを辞任する人々が政治に対して、以前よりもはっきりものを言うようになったと思います。
12月16日[毎日]は、全国紙地方紙の7日の社説から、この法案に対する姿勢を分析しました。
全国紙は[朝日][毎日][日経]3紙が反対で[読売][産経]が賛成です。地方紙のほとんどは反対です。福島民報は「原発隠しが懸念」と書きました。
地方紙の見出しで厳しいものを言うと、「こんな法律はいらない」[下野、茨城、山陰中央]「憲法を踏みにじる暴挙だ」[北海道]「安倍政治 軍事優先には『ノー』を」[信濃毎日]「おごり極まる強権ぶり」[沖縄タイムス]「許されぬ権力の横暴 解散し国民の審判仰げ」[琉球新報]です。
そして[世界]12月号で金平さんは「日本の一部の新聞では、自社の社論で記者個人の意見まで統一することが普通」であり、その代表格は[読売]だといいました。さらにテレビ局は「局としてこの法律に反対を言うことがなかった」といいました。
これはまさにジャーナリズムの危機でしょう。
この演歌的人生
ここからは芸能的コラムの紹介です。まず最初は「この演歌的人生」[朝日(夕)]12月16日から4回です。
第1回は「怨念に宿る 一輪の花」の藤圭子です。彼女の生い立ちを紹介して「貧困、流浪、差別、因習・・・。戦後の日本人が封印してきた世界を体現したのが藤の歌だった」という伝説に生き、伝説に死んだような感じです。
第2回は「いつか咲く 風雪に耐え」ての一節太郎、ご存知「浪曲子守唄」で「この歌にはネガティブな怨念がメタンガスのようによどんでいる」のです。芸暦半世紀はこの歌だけ持った。本人は故郷の新潟でカラオケスナック「演歌の宿」を開いているそうな。
第3回は「女王の愛した枯れすすき」で「昭和枯れすすき」と谷ナオミ。両方とも知らない人は多いようですが、誰かに聞いてください。「SMの女王」と呼ばれた彼女はこの歌が大好きだそうです。
「男の傍らで快楽にむせびながら、目の奥にはどこか恥じらいがあった」「その苦悩の表情に、苦悩を洗い落としたような人間的な美しさを感じた」のは同感です。
第4回「口ずさむ 私の応援歌」で紹介されたのは「人生いろいろ」「あゝ上野駅」であり、もず昌平の「歌は心のよりどころ。社会的に弱い立場の人たちをうたう共感の歌」という言葉です。
こまどり姉妹がやってきたヤア!ヤア!ヤア!』田端義男の『オースバタヤン』も大好きです。そう私は演歌ファンです。
人生の贈りもの『高畑勲
[朝日]の夕刊に「人生の贈りもの」というコラムが連載されています。人物の紹介で、一人で月〜金まで1週間五回の記事で、短いものですから多面的に、そして本質的なところをえぐるような紹介は、なかなかありませんが、けっこう楽しめます。目新しいものもありました。
どの程度前から掲載されいているのか知りませんが、最近に私が関心をもった人でも、宮本憲一、張本勲中井久夫佐藤忠男がいました。そして12月9日から高畑勲さんが紹介されていました。
語録を拾い集めて、高畑さんらしさを味わってみましょう。
「僕は惨めな話がよかった」
「そういうことは現実ではしょっちゅうだからです。最近は、見る側の『こうなってほしい』という願望を書き立てて、それを満たす映画ばかり。・・・挫折した人生を描く作品も万人は見たほうが良い」
「見た後で『話の肴』になる映画を作りたい」
「僕が多くの映画を作ってこられたのは、ずっと運が良かったからです」
「僕は絵描きでもストーリーテラーでもない。他人の才能に依存して作っている」
「他人の作品を楽しむ能力では、僕は宮さんよりずっと上です」
宮崎駿は「友達です。そして天才です」
「気に入らない絵は全面的に直してしまう。そんな人の下で働きたいと思いますか」
「他の人を思いやらず、一つの立場だけに思い入れ、善悪を単純に判断する。娯楽作品だけの中だけならいいが、それが社会的な場面で行われたら怖いと思います」
「完璧なんて考えない。だけど作品が『これだけのことをしろ』と要求してくる」
「多くの女性は現実的で日常に根ざしている。僕自身が理念に重きを置かないので共感するんです」
「引退宣言なんてしません」
高畑さんと宮崎さんは大きく違うけれども、友達なんだと思いました。
古希の来年「自分に定年」
小椋佳さんのインタビューは[毎日(夕)]ですが、日にちがわかりません。これは高畑さんと大違い。小椋さんは69歳、高畑さんは78歳です。
「本当に疲れています。人間として」
「老醜をさらすべきではない、という思いもある」
「一番気がかりは、日本語の乱れ」
「職場でも自分らしい生き方をしてほしい」
楽家でも大成功した、東大卒エリート銀行マンらしいですね。
彼に高畑さんのこの言葉を贈ります。
「栄誉を得た選手が『夢は必ずかなう』と叫ぶのは滑稽です。あなたはかなったかもしれないが、かなわなかった多くの人をどう考えるのか」
『くらしの明日』湯浅誠
標記の[毎日]のコラム、12月25日は「代議制民主主義への不信」という見出しで、2013年の政治批判が書かれました。
「きめられない政治」から「安定した政治」になり、国会の権威が低下したというものです。
まず「民意とのねじれ」です。小選挙区制度(衆議院参議院も)によって、「4分の1の民意で圧倒的多数を得た」自民党の暴走です。
そして三権分立の中で「国権の最高機関」(憲法41条)から滑り落ち、政府(行政)と司法の優位な情勢になっているといいます。
特定秘密保護法は国会の行政に対する監視機能を弱体化した。
司法は、1票の格差で「違憲状態」、婚外子の相続、性別変更の夫の子の親子関係を認めるなど、「国会の自浄作用を見限った」ように動いた。
湯浅さんは「政治不信の対象が、個々の政治家や政党から、代議制民主主義というシステム自体に向かっている」「国会が弱体化するということは、つまり、民意が軽視される」と警鐘を鳴らす。
私は、国民の多くが自らの責任から逃れ、強いものに身を委ねたいという願望は非常に危険だと思う。
武器の父とよさらば
24日の新聞が、ロシアのミハイル・カラシニコフ氏の死亡(23日)を報道していた。94歳である。[毎日]は大きく写真入りで報道していた。
彼は世界中に普及している自動小銃AK47の設計者である。これは軽くて上部、部品が少なく手入れが容易という優れた武器だ。私は「子ども兵士」のことを調べている時に、このことを知った。子どもでも扱え、しかも非常に殺傷力も高い。
アムネスティも「国際法に反する残虐な行為に使用されている」と批判している。
朝日新聞記者の松本仁一が「カラシニコフ」という本で、その実態を書いている。
第2の矢は不発
[日経]16日に「公共事業GDPをかく乱 予算使い残しで下振れ」という見出しの記事が載りました。
経済対策で盛り込まれた多額の公共事業費は「実際には使い残しが多く、需要増にいたっていない。2012年度のGDPは公共投資が見込みを下回り、経済成長率が0.5ポイントも下方修正された」のです。
国と地方の「投資的経費」は20.3兆円で3年続けてマイナスです。しかも12年度の不用額は6千億円、13年度への繰越額は4割3.8兆円です。
これは発注側と受注側も人手不足であるのと、準備もないのにむりやり予算を押し付けたためです。ある職場では通常の工事費の4倍5倍の予算が押し付けられた、と聞きます。
しかも神戸市でも入札が成立しない件数が増えていますが、被災地も同様のようです。
アベノミクスの第2の矢は看板倒れになる可能性が大です。