スコットランド独立の住民投票

スコットランド人は、連合王国にとどまる選択をした。独立反対55%、賛成45%と言う比率だ。これについて[朝日][毎日][讀賣][神戸]の社説、浜矩子(同志社大教授)、増田寛也(元総務相)の言説(ともに[毎日])を読んだ。(9月20日、21日)
その印象を書く。
新聞は保守傾向
「実に残念」と明確に書いたのは、浜さん。それ以外は濃淡はあれ、妥当な選択と言う評価だ。
[毎日]は「ひとまず胸をなでおろしたくなる」。[神戸]「連合王国の分裂の危機は、何とか回避された形だ」[讀賣]「英国が分裂し、混乱に陥る最悪の事態は回避された」。[朝日]「もし独立となれば・・・あらゆる分野で見通せない不安がぬぐえなかった」。増田さんも「この投票結果はかえってスコットランドにとって良かったと見ることも出来る」といった。
私もどちらが良いか、明確にはわからない。でもTPPや自由貿易グローバル化を賛美する大手新聞であるのに、国境線の溶解、国民国家の終焉という時代の流れは反対なのか。
どう評価したのか
では、この住民投票自体、及びその結果をどのようにとらえているのか。社説の見出しを追うと[毎日]「国家の進化につなげよ」[朝日]「国の姿を見直す契機に」[神戸]「自ら決めた『残留』の重さ」[讀賣]「独立否決でも難題は残った」[増田]「民主主義の成熟示した」[浜]「諦めることなかれ、スコットランド 熱血と計算高さ」となる。
民主主義の関係では「分離・独立運動にありがちな鋭い対立、衝突や流血」がなかったことから[神戸]「英国社会の成熟」や[増田]「民主主義のお手本」と評価した。あとは触れていない。
評価分析の視点は大体2点。①反対派が多数になったが、なぜ拮抗したか。②今後の英国と世界にどんな影響を与えるか、ということ。
[朝日]は①について「英国との一体感を保ちたい人々の願いだけではない。混乱を避ける意識も」あったが、世論調査で一時は逆転した。それは「ナショナリズムだけではなく、英国が進めてきた政策へ不満があった」それは「EUと距離をおき、自由競争に重んじる英政府に対し、スコットランド住民は,EUとの協調、福祉重視」、②は英国の自治の拡大だけではなく、分離独立めぐる係争を抱える多くの国と「意見を交わしつつ、開かれた議論をする土壌つくりを進めてほしい」、その一つに日本の沖縄を挙げている。
[毎日]は①については触れていない。主に②で英国内に「対立や新たな火種を残す」、それは独立を阻止するためにスコットランド自治権拡大、財政支援を約束したが「ウェールズ等他の地域から「不平等」との不満が続出」する可能性があるからという。またスペイン、ベルギー等をあげて、他国の動きに心配している。
[神戸]は、①は「福祉切り詰めや核配備」での反感があるが、「新国家の具体像となると、不透明感は拭えなかった」、②は世界の他国はなく「分権改革やが地方の自立が求められている日本」というが、沖縄という名前は出していない。
讀賣]は、①は「経済面や対外関係での悪影響への懸念が主な理由」として、財源確保やポンド使用、大手企業の反感をあげたが、ここまで拮抗した理由は「北海油田などからの税収を元に社会福祉を充実できる」と訴えたからだと言う。②は投票が決まった2年前から、独立派が大幅に伸長して「スコットランド自治権限の大幅拡大」が約束された、「民族主義などと結びついた自治要求が国際秩序をも揺るがしかねない」と心配する。
さすが[讀賣]らしい。
自治権は拡大へ
年代別の賛否を見ると若年層は賛成多数で、55歳以上から反対派が多数になった。65歳以上は7割が反対。
独立の「夢」は消えない、と言っているが、それはスコットランドだけではなく、世界中で自治権を拡大する方向になる、と思う。