1月に見た映画の残り『南山の部長たち』『コロニア』『エスケープ・ルーム』『アリ地獄天国』を書きます。
『南山の部長たち』
韓国1979年10月26日、朴正煕大統領が側近のナンバーワン、KCIA部長に射殺された事件を描く、実話に基づく映画です。事件から遡ること40日間が描かれます。
権力闘争と言う面もあります。大統領を裏切った前部長から大統領が隠し資産を持っていて本当の側近が管理しているという「秘密」を聞かされます。政権ナンバー2の地位が脅かされる、警備部長との争い、朴正煕大統領に疎んじられている、そういう焦りも持ちました。
朴正煕に対し腐敗した政権を倒して国民のための政治を作ろうとクーデターを起こした同志と言う思いを、KCIA部長は何度か口にします。1961年に軍事クーデターを起こし、その後18年も軍事独裁政権、民主派を弾圧し続けたグループが何を言うのか、と思いましたが、韓国民の感情としてどうなのかな。
ヒットしたと言います。それは何故か、韓国の政治が民主化して近現代史をリアルに描けるようになったからなのか、朴正煕に人気があるからか、わかりません。開発独裁という手法で「漢江の奇跡」という経済成長で、戦後から最貧国の一つだった韓国を、今のような、いびつではあるが経済的に豊かにした基礎を築いたという評価もできる、と思います。
『コロニア』
実話をもとにした恐ろしい話です。1973年チリ、米国の支援を受けてクーデターを起こしたピノチェト将軍は、アジェンデ大統領を支えてきた労働組合員やジャーナリストなどを弾圧し、拉致、虐殺を行いました。
アジェンデ派の支援に来ていたドイツ人ダニエルも秘密警察に捉えられて拷問を受けました。そこは「コロニア・ディグニダ(尊厳のコロニー)」と呼ばれるカルト教団の施設で、ピノチェト軍事独裁政権と強く結びつく「生きては出られない」恐怖の館です。
彼の恋人、ルフトハンザ航空のキャビンアテンドであるレナは、ダニエルを救出するために、信者を装い、決死の覚悟で潜入しました。
男女に分けられた宿泊棟、逆らうことの許されない強制労働と日常生活、そして異常な儀式の中で、レナとダニエルは出会い、秘密の地下道を見つけ出します。
二人は132日目に脱出に成功しました。しかし逃げ込んだ西ドイツ大使館にもピノチェトの手が回っていました。ギリギリのところでルフトハンザ航空の飛行機に飛び乗りますが、管制塔から離陸中止の支持が出ます。
ハラハラドキドキの映画で、よく脱出できたと思いました。
実話ですから、数十年という長期間、信者たちは教祖に絶対服従であったことと思います。恐怖と暴力による支配です。
このカルト教団はピノチェト政権の前からつくられていた組織で、教祖はナチスの残党です。ピノチェトが倒された後、少年たちに対する性的暴行で起訴されるが逃亡し、2005年に逮捕されます。
『エスケープ・ルーム』
米国映画です。脱出ゲームの賞金につられてやってきた男女6人(男6、女2)(白人3、黒人2、インド人1)が、協力しながら色々な罠が仕掛けられた部屋(5つぐらいあったか、灼熱、氷、天地逆転等)の中から決死(実際に死人が出ます)の覚悟で脱出する「ゲーム」です。
些細なところから脱出のキーワードを得るのですが、映画全体として何が言いたいのかよくわかりません。
『アリ地獄天国』
労働争議のドキュメンタリーです。日曜朝のニュース番組、サンデーモーニングは良いス番組だと思ってみていますが「アリさんマークの引越社」というCMが流れるたびに不愉快です。スポンサー契約と、番組制作の部門は別ですが、番組のイメージを悪くすると思います。この映画を見ていっそうそれを確信しました。それほどひどいブラック会社です。
固定の残業手当を組み込んだ給料、仕事中の事故などに対する損害賠償、休暇もとれないなど酷い労働現場ですが、そこに不満の声を上げた若い営業担当を会社は「シュレッダー係」にしました。「人事は会社の裁量」といいます。彼は胃が痛い毎日を送ります。
西村(仮名)さんは個人加盟の労働組合に入って、会社に団体交渉を申し入れて、それが都の労働委員会、中央労働委員会へと闘いの場を移して、最後は全面勝利の「和解」となりました。
団体交渉を拒否し、抗議のビラを会社の前で配る支援の労働組合員を恫喝する映像は、まさに「反社」かと思う酷さです。
この映画は、そのブラック企業と正面からぶつかる労働者、労働組合の闘いの映画ですが、少しでも気持ちよく働きたいと、声を上げた勇気ある一人の若者の成長の記録でもありました。
引越社の現状がどうなっているかはわかりませんが、経営陣が変わっていないと、大きくは変わらないと思います。CMに流れる「優しい」とは程遠い非人間的な暴力がありました。