他を優先したので長いこと放っていましたがやっと書けました。
『思いつきで世界は進む「遠い地平、低い視点」で考えた50のこと/橋本治』『泥濘/黒川博行』『図解使える失敗学大全/畑村洋太郎』と雑誌『世界8月号』『前衛8月号』を書きます。
『思いつきで世界は進む「遠い地平、低い視点」で考えた50のこと/橋本治』
筑摩書房のPR誌に2014年7月号から2018年8月までに書いた短文50篇をまとめたもので5つの見出し「バカは忘れたころにやってくる」「いったい日本はどこへ行く」「誰もが話を聞かない時代」「思いつきで世界は進む」「世界は一つなんて誰がいった」でまとめてありました。
社会批判、権力批判ですがちょっとわかりにくいものもありました。気になったことを書いておきます。
・おやじ系週刊誌は「社会に対する関心」がない
・「人を殺してみたい」という若者の心理
『泥濘/黒川博行』
桑原、二宮のコンビの悪漢ハードボイルド・シリーズです。展開が早くて、とても読みやすい本です。登場人物がたくさん出てくるので「主な登場人物」のリストがついているのも親切で便利です。
暴力団現役の桑原は金の嗅覚がすごくて、福祉法人の不正から、そこに巣くう暴力団と警察官OB組織の癒着、殺人事件を嗅ぎ付けました。さらにオレオレ詐欺までも関係しています。
二宮は、死んだおやじが元暴力団幹部で、それを利用して土木建築工事関係の「さばき」(金を貰って暴力団の脅しなどから守る、調停する)のコンサルタントです。いつも桑原に利用される立場ですが、彼にたかり、なにがしかの報酬を得るという立場です。
そして巻き添えを食って怪我をすることもしばしばあります。
桑原たちは、福祉法人の不正を金にするために関係者を脅し透かし、暴力まで使います。金が欲しい悪徳警官も利用する狡猾さもあります。
ですが、ついには自分までやられます。
500頁の大部ですが、ついつい読んでしまいます。面白いのです。
『図解使える失敗学大全/畑村洋太郎』
失敗学について短い文章と図解で解説する本です。92項目ありました。気になったことを書いておきます。著者は福島原発事故の調査・検証委員長です。
・情報を正確に伝えることで失敗を防ぐ
さらに失敗を記録し伝達、共有が必要と言います。しかも第3者よりも当事者の生々しい情報が必要と言います。だから責任追及は、その次になるのですね。
・懲罰人事の後にこそ、フォローが必要
失敗の真の原因は、個人ではなく会社や組織の文化に潜んでいるといいます。
・企業風土を改革するためには4つの文化「自ら意思決定し挑戦する」「コミュニケーションする」「マニュアルを磨いていく」「2.5人称の視点を持つ」
・必ず一人が全体像を捉える
二人以上が分担して全体評価をすると、必ず見落としが生じ、事故や失敗が起きてくる。成功するには全体像を捉える一人が必要だ。
多くの情報ではなく、コア情報から全体像が想像できる人間が必要と言います。
『世界8月号』
特集は『安倍政治の決算』です。各記事のタイトルは「愛国心」「統一教会」「官製歴史修正主義」「安保法制」「琉球処分」等、当たっています。そんな男を国葬にした岸田は、これらと表裏一体のゲスだと思います。
その中の一つを紹介します。
『若者の安倍政権支持?/能條桃子』
著者は中学3年から22歳までが第2次安倍政権だった世代です。若い世代はどの世代よりも安倍政権を支持しましたが、彼女には「漫然とした現状維持の空気と、政治への諦めがセット」と見えます。
「声を上げても変わらないという無力感」「自己責任を内面化している」世代、「系座郵船が民主主義や人権を軽視する結果を生んでいる現状は続いている」しかし女性蔑視発言の森喜朗は辞任した。
これを見て「何も変わらない」は思い込みであったと知った。
彼女は「わたしたちが生きている社会はわたしたちがつくっている」に到達しました。
『前衛8月号』
7月号8月号に『日本の平和のための博物館における十五年戦争―常設展示の現状を見る(上)(下)/山辺昌彦』がありました。労作で全国の平和資料館を紹介しています。
残念なことに神戸には、公立の平和記念館はありません。兵庫県下には公立の姫路、明石、西宮、加西に平和記念館・室があります。元町にある海員組合がつくっている「戦没した船と海員の資料館」は素晴らしいものです。
残念ながら、多くの平和記念館は被害の展示が多く、アジア太平洋戦争全体、加害についてはほとんど言及せず展示していません。