2025年7月に見た映画その2

『丘の上の本屋さん』『フロントライン』『木の上の軍隊』『明日に向かって撃て!』の4本を書きます。

『丘の上の本屋さん』

 映画サークルの7月例会で、500人を超える人々に見ていただきました。

 イタリアの田舎町の小さな古本屋の店主と、そこにきたアフリカからの移民の少年との交流を中心に描いています。それ以上のものではないのですが、心に温かいものを感じます。

 色々な本を求めてお客がきます。発禁本やSM関係はご愛敬です。

 黒人少年はお金がありません。でも本、漫画が好きそうです。店主は「貸してやるから読んだから返せよ」と言って次々に本を渡します。

 『ピノキオ』『イソップ物語』『星の王子さま』『ドン・キホーテ』等、さらに『ロビンソン・クルーソー』『アンクルトムの小屋』があり、そして最後は『人権宣言』でした。

 この本のセレクトが、この映画の醍醐味だと思います。それには私も賛成です。しかしそこに日本はもちろんアジア、アフリカ、ラテンアメリカの作品がありません。欧米系文化を中心に考えているなと思ったのです。

 仕方がないと言えば仕方がないのですが、私は 貧しい黒人少年に『ロビンソン・クルーソー』『アンクルトムの小屋』を読ますのはどうかと思いました。

『フロントライン』

 コロナが日本で最初に集団感染した事件、横浜に停泊した豪華客船ダイヤモンド・プリンセス号での出来事、DMAT(災害派遣医療両チーム)の活躍を描く、実話に基づく映画でした。

 困難な状況の元でも頑張り抜いた医療チーム、客船のクルーたちの奮闘は感動的でした。それに対するマスメディアの対応、風評被害は全く理不尽であり、彼らの活動を制約したことなどもきちんと描かれています。

 DMATは「感染症対策は専門外」のチームでしたが、誰も行かない危険な、何が起きるかわからない、未知の密閉された空間に乗り込んでいきました。

 そこに来た感染症専門の医師が「何もわかっていない」というような厳しい批判、告発をインターネットに上げたことは記憶にありましたが、映画でもそれを描いています。全体的に緊張感もあり、医療制度や医療行政の足りないところも描いています。

 横浜市役所があまり関与していなかったのが意外でした。

 ラストは、乗客が下船して、DMATのメンバー達が清々しい顔で出てきたことが、私は不満でした。札幌の老人施設で集団感染が出たといいましたが、このあと全世界、日本でももっともっと大変な事態になると知っています。

 ですから、彼らもそれを予感して不安な終わり方である方がいいですね。

『木の上の軍隊』

 井上ひさし原案、こまつ座原作となっていました。井上ひさしの残した2行のメモをもとにこまつ座が蓬莱竜太、栗山民也に依頼して戯曲を作ったそうです。木の上に逃げて生き延びた兵隊という事実に基づく映画です。

 ちょっと期待外れです。沖縄戦の厳しさや理不尽さを沖縄人の視線で描くと思ったのですが、それは少なかったです。でもそれは仕方がないと思います。

 映画は木の上に逃げた二人を中心に描き、沖縄戦全体については描きません。

 場所は沖縄本島の隣の島、伊江島です。ここに陸軍は、村人たちを動員して「東洋一」の飛行場をつくるのですが、完成したとたん、日本軍が使用する前に米軍が上陸してくるというので、今度は、それを壊すところから始まります。

 米軍との戦闘は敗退を続け、日本軍はガマに避難します。そこで民間人を追い出す軍隊をはっきり描きました。

 米軍に追われて、木の上に逃げた二人は、歴戦の少尉と沖縄出身の新兵でした。伊江島の戦闘は1週間ほどで終わったようですが、二人は上手に隠れていて「援軍が来るの待つ」という考えで生き延びます。

 そして終戦を知らずに2年を過ごしました。二人は米軍が残していった残飯などを食べて、雑談のような身の上話、普通の世間話を交わしまた。二人のいがみ合いがありません。伊江島出身の新兵は従順で、上官も沖縄に対する差別意識はないのです。

 面白みに欠けました。

明日に向かって撃て!』

 1969年公開の米国映画です。原題は『ブッチ・キャシディザ・サンダンス・キッド』で、実在した二人組と彼らの盗賊団が銀行強盗、列車強盗を働く姿、そして落ちぶれていく様子を描きました。

 アメリカンニューシネマという、権力に逆らう若者たちを描いた一連の映画の代表作です。私もテレビの洋画番組、あるいは2番館で見たと思います。その記憶では、彼らが暴れまわるような悪漢映画と思っていました。

 しかし今回見て、それは間違っていました。映画の13は彼らが気ままに暴れていましたが、列車会社のオーナーが、ブッチたちを捕まえるために雇った優秀な保安官たちによって二人は追われ追い詰められて行きます。

 そして二人は恋人を連れて新天地ボリビアにわたりました。そこでも強盗を働きますが、最後には警官隊と軍隊に幾重にも包囲されてしまいました。

 二人のみじめさばかりが目立ったのです。そう受け止めました。若い時見た印象と大きく変わっているのは、年齢のためでしょうか。そこはわかりません。