2018年の映画

映画サークルのベストテンに投稿しました。いずれもどこかで書いた映画ばかりですが、まとめてですので読んでみてください。

※ ※ ※

 ファンタジーのような映画、痛快アクション映画も見ますが、記憶に残るのは現実を写し取った映画です。ですからカタイ映画ばかりになりました。

市民映画劇場

  1. 10月『ロープ/戦場の生命線
  2. 2月『弁護人』
  3. 5月『ローマ法王になる日まで』

市民映画劇場の映画は、いずれも魅力を持っているし、好きな傾向の映画です。だから三本を選ぶのは迷いますが、担当した映画が二本入りました。何度も繰り返し見て深く考えることができたので、印象に残ったためでしょう。

『ロープ』はNGO職員が命がけで働く姿が「軽く翼を遊ばせて、重い荷物を運ぼう」というイメージで、好感が持てるのです。しかも新人は別として、厳しい環境で長く働いている彼らから人生の影を感じました。

『弁護人』『ローマ法王になる日まで』は担当した映画です。『弁護人』は韓国の軍事独裁政権の酷さとそれを対決する弁護士の闘いを描きました。『ローマ法王になる日まで』もアルゼンチンの軍事独裁政権の残虐さと、それに向き合った現ローマ教皇の生き方を描いています。

どちらもほぼ史実で、暴政に立ち向かう二人の人間性が出ています。彼らの後の人生を知っていますからよけいに面白いと思いました。 

邦画

  1. 万引き家族
  2. 沖縄スパイ戦史
  3. 空飛ぶタイヤ

万引き家族』は是枝作品で一番評価しています。なぜかと考えると、「つくられた家族関係」を、私が素直に受け入れることができたからだと思います。彼のこれまでの映画で描く家族関係は、どこかで「違う」と感じていました。

沖縄スパイ戦史』はドキュメンタリーの力を感じます。戦時中、沖縄県民に負担を強いた皇軍の実態と目的、そこでの人々の反応(親交と嫌悪)が描かれます。そして現在、押しつけられる米軍基地、自衛隊基地への対応と重なって描かれます。 

空飛ぶタイヤ』は池井戸潤の原作、大型トラックのタイヤ脱輪事故を巡って大企業と中小企業の対立を描きました。実話に即した小説で、蟻が象を打ち破るところが気持ちいいのですが、企業だけでなくそこに警察や監督官庁の役割が描かれました。

 

洋画

  1. 87『オーケストラ・クラス
  2. 266『判決、ふたつの希望
  3. 2『1987、ある闘いの真実
  4. 114『希望のかなた
  5. 106(華氏119)

オーケストラ・クラス』はフランスの下町の小学生たちが、プロのバイオリニストからバイオリンを学ぶ特別授業を受けて、彼らも先生も、親たちも成長していくというありきたりの物語です。それがなぜか心に残りました。

『判決、ふたつ希望』はレバノン人とパレスチナ難民の男が、些細なことで喧嘩をして、裁判で争います。それが国家を揺るがす大問題を孕んでいることが明らかになり、中近東の複雑さと、彼らを苦しめる元凶まで迫ります。幕引きが上手でした。

希望のかなた』は、アキ・カオリスマキ監督の文体でいつものように味がありました。焦点が絞られる感じではないのですが、彼の手にかかると難民問題がこうなるか、と思いながら惹かれていました。

『華氏119』は、現代米国がここに描かれている、と思います。断片的事実をつなぎますが、トランプ大統領の誕生で、彼だけではなくオバマにもあるトランプ的なものと闘う問題が鮮明になってきているように感じます。

1987、ある闘いの真実』は、韓国の民主化闘争を描きます。多く立場の人々が、暴力で人権を踏み潰し事実を隠ぺいする軍事政権に立ち向かった姿は感動的でした。日本はバブルの時代で比べていました。