3月2日、3月例会『栄光のランナー』(3月17日18日)の学習会を標記のタイトルで小笠原博毅(神戸大学教授)さんに話していただきました。
映画は1936年ベルリンオリンピックに出場し、4つの金メダルを獲得した米国の黒人選手オーウェンスを主人公とする実話に基づいたものです。
小笠原さんは、社会学が専門分野でスポーツ文化論などを研究されています。東京オリンピックに反対する本も出されています。
人種はあるのか
とても刺激的で面白い話でした。恒例の懇親会にも参加いただき、そこでもたっぷりと話が聞けました。
まず最初に「人種」と言う分類は、肌の色に着目しているが、それは科学的に有効な分類なのか、と言う問いかけです。
私には「目から鱗」でした。白人や黒人、黄色人種と人類を分類しますが、人間の遺伝子は1種類です。その分類は「差別」するためにつくられたものではないのか、と言うものです。
そうです、地域や民族の文化は多彩ですが、生物学的に人間はみんな同じです。
奴隷制度は古代ギリシア、ローマの時代、地中海の植民地時代にもありましたが、それとアジア、アフリカの植民地はちがいます。そして新大陸への奴隷貿易が最も盛んになったのは啓蒙主義の時代で、欧州中心の文明と野蛮という考えを広めました。
人種は、その時期に作られた考え方です。
オリンピックに反対
ナチス時代のベルリン・オリンピックは国威発揚が最大の狙いでした。ヒトラーのいうアーリア人の優位性を示そうとしましたが、黒人のオースティンが短距離と走り幅跳びで等で四つの金メダルを取り、ですから「ヒトラーに勝ち」です。
しかし彼は帰国後、米国の人種差別によって不遇をかこち「アメリカに負けた」人生をおくりました。映画は「そのあたりがちょっと弱い」と先生は指摘されました。
オリンピックは、ベルリンだけではなく政治利用や商業的利用もあります。勝利至上主義がドーピングを生み、近代オリンピックのクーベルタンのスポーツの純粋な「理想」とはかけ離れています。
小笠原先生は、問題の多い東京オリンピックだけではなく、現代のオリンピックのあり方そのものに反対だと言われました。
私も「日本頑張れ」と言う声援は好きになれませんから、国の対抗戦みたいなのは嫌いです。
神戸映画サークル協議会のHPで紹介しています。http://kobe-eisa.com/