標記の感想を書きましたので、載せます。
笑いながらも辛辣なコメディに
現代イタリアを映す
市民映画劇場では珍しいコメディ映画、面白く楽しく見ました。明るい能天気なイタリア野郎が、イタリアの支配的通俗的な「常識」を自虐的に笑い、権力も蹴飛ばすとても痛快な映画でした。
ちょっとクレイジー・キャッツの植木等が主演した映画、無責任男シリーズを連想させます。主役はケッコ・ザローネ、これは「田舎者」という意味です。彼は芸名をそのまま役名に使いました。素晴らしい才能の持ち主で、主演だけでなく共同原案、共同脚本、劇中歌作詞作曲までやってのけました。監督のジェンナーロ・ヌンツィアンテとのコンビで四作のコメディ映画を作りました。中でもこれはイタリア映画史上最高の興行収入を上げています。
日本ではロードショウ公開されていませんが、イタリア映画界では圧倒的な支持を受けています。
例会学習会で「ケッコの映画を見ればイタリアがわかる」という講師、牧みぎわさんの言葉が印象に残りました。

仕掛けがいっぱい
いきなりアフリカ大陸の奥地で「野蛮人」に捕まるファースト・シーンです。彼らの領土に踏み込んだから、首領様の命令で殺される?「いつの時代」と一瞬思います。でもそれが「これからパロディが始まる」という布告であると気付きました。
ケッコがアフリカに至るまでの回想を語り、それが映像として出てきます。
邦題を『Viva!公務員』(原題は『僕はどこへ行く』)としたように、映画は「公務員天国」を皮肉っています。
仕事らしい仕事もなく、出退勤時間は気まま、電話や物品を公私の区別なく使い放題、便宜供与、袖の下も気まま、しかも「安定」しているから女の子にもてる(給与が高い、とはいいません)と「持ち上げ」ました。
ところが人員削減が宣告されます。
イタリアの地方自治は州、県、市町村という三層構造になっていて不効率、という批判に応えて、県をなくす行政改革が進められます。しかし人員削減と言っても多くの対象外という「手心」があり、この事務所の首切り対象はケッコだけという肩すかしです。
退職勧奨に応じない労働者に対する「厳しい」仕打ちは僻地への転勤です。でもケッコは喜々として楽しみ、最も厳しい北極圏の研究所で、魅力的な女性を見つけて結婚まで踏み切ります。
彼女には父の違うアジア人、黒人、白人の三人の子どもがいて、ケッコは白人の子どもを当然のように「優秀な種族」といいます。また彼女の元夫がバイセクシャルで同性結婚式まで見せます。
イタリア人の差別観を見せ、ノルウェーの民主主義を持ち上げて対比させます。
イタリア万歳
ケッコが飛ばされる僻地は山奥であり離島あるいは治安不安地域ですが、風光明媚でイタリアらしいいい感じです。そしていい加減なイタリア人気質を「それほどわるくない」と言うまとめ方です。
それにしても、イタリア人の典型を見せるのに、主人公を地方公務員に充てる発想ですが、この職種はそれを反映するのか、そしてそれは日本も含めた世界各地で共通するものかと思いました。