コロナ禍の映画状況

 

標記のタイトルで以下の文章を書きました。兵庫県自治体問題研究所から依頼があり、兵庫県版「住民と自治9月号」という冊子に掲載されます。

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解除されても

 映画館は、緊急事態宣言が525日に解除されて以降、徐々に開いて行きました。幸いなことに兵庫県下では廃業した映画館はないようです。

しかしどの映画館も「3密」回避のために定員を半分に制限しています。ミニシアターは1月半の閉鎖期間の維持費も大きな負担となっていますが、日常的な経営も厳しいですから、この状態が続くようだと、これからの経営自体が厳しくなります。

 元町映画館などは70未満の座席数で、もともと満員になる映画は少ないのですが、半数以下の定員では従業員の給料さえ出せなくなるのではと心配です。

 しかも私が見ている限りでは、観客はまだ戻ってきていないように思います。

 自粛ムードが続いていることや新作映画の公開が延ばされていること、高齢者の映画ファンが敬遠しているなど色々な理由があると思います。自粛中にインターネットやレンタルDVDで家庭に居て映画を見ることに慣れたのかもしれません。

映画を劇場や市民ホール等で、大勢と一緒に見るのも映画文化の形で、それを私は守りたいと思います。

映画界の状況

 コロナ禍で映画産業、映像文化も大きな影響を受けています。

4月7日、7都府県に緊急事態宣言が出されて以降、全国的な自粛モードで映画館にも休館要請がありました。大手のシネマコンプレックス等の映画館がそれに応じて休館し、独立座館といわれる地方の小規模な映画館も順次、休館していきました。

兵庫県でも元町映画館が最後となり415日から休館しました。

日本映画界は2019年の映画人口19000万人、興行収入2600億円という経済的には小さな規模ですが、社会的文化的に重要で大きな影響を持っています。公開本数邦画689本・洋画589本も含めて世界有数の映画大国です。

 しかし製作、配給、興行、上映鑑賞とそれぞれに課題があります。製作現場では、大手の映画会社が自前の撮影所を持っていた時代と違って、映画労働者の多くは不安定雇用です。興行面ではヒット作5%の作品が興行収入8割を占めています。製作費を回収できない映画が多くあります。例年、アニメ映画が上位にきています。

邦画も洋画も一部の大企業、とりわけディズニーと東宝が利益を独占している状況です。 

 また全国の映画館は約3500スクリーンありますが、都市部に集中し、映画館がない地域が広がっているのが特徴です。

 その下で映画ファンの身近へ良質の映像文化を届けているのは、地方のミニシアターであり、非劇場で映画館がない地域を回っている映画センター等の移動映画館です。また私が加わっている映画鑑賞団体です。

映画館の自粛、休館が言われると「ミニシアターを救え」と、心ある映画人がさまざまな支援プロジェクトを立ち上げました。政府への政策提案もありましたし、経済支援

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支援のTシャツ


「ミニシアター・エイド基金」(濱口竜介監督、深田晃司監督が発起人)は1万人以上から3億円を超える資金を集めました。

関西のミニシアターを財政支援するためにTシャツを買ってもらう「SAVE OUR LOCAL CINEMAS」も好評でした。(私も買いました)

しかし移動映画館や市民団体には、映像文化を支えるための支援はありません。

兵庫県映画センターは、学校や地域の公民館などに映画を持ち込んで上映していますが、学校の休校要請があった2月末以降、ほとんどの仕事は中止となっています。夏はイベントの時期ですが回復の見込みもありません。

市民文化活動の再生のために

緊急事態宣言よりも早くから神戸市や兵庫県の公的ホール等は閉鎖しています。映画サークルも32021日『マルクス・エンゲルス』(石川康宏氏講演付き)県民会館での上映が最後で、再開したのは61920日『北の果ての小さな村で』KAVCホールです。

     コロナ禍という生命の危機にある事態ですから、閉鎖や利用制限などは理解できますし、受け入れてきました。しかし再開にあたってのホール側の連絡は一方的で、利用者の意見を聞くとか調整する姿勢ではありません。

それは指定管理者という制度と関連しているのかもしれませんが、全国的な基準に基づく神戸市からの指示を伝えるだけでした。催事の種類や規模に応じた検討などはありません。

KAVCホールの使用条件は、感染症対策として入場定員を当初は1/4(後に1/2に変更)に制限し、参加者名簿作成や体温計設置等も要求されました。

私たちは、それに対応すると同時に、コロナ禍での利用方法について話し合いをすることや使用料の減免等の要望書を提出しました。その後つくられた施設使用料を半額助成する兵庫県・神戸市「芸術文化公演再開緊急支援事業」では映画上映は対象外とされています。

市民団体は、多くが財政状況も厳しく事務局体制も脆弱で「民主的手続き」も大事にするので、緊急事態に機敏に対応することができません。活動再開を会員に伝えるのも苦労しています。

映画サークルは、例会ができない2ヶ月の財政を賄い活動を継続していくためのカンパをHPや例会場で訴えています。

自治体の文化行政の役割は、市民に対して良質の芸術・芸能の提供と併せて市民の文化芸術活動の支援、育成もあります。自然大災害に匹敵するようなコロナ禍で、市民団体は財政的危機に陥っています。

公的ホールを利用し、活動の拠点としている団体について、その実情を把握し適切な支援が求められます。協力協同して乗り越えていく姿勢を持つべきです。(8月2日記)