2021年9月に見た映画その2

『アナザーラウンド』『テーラー人生の仕立て屋』『アイダは何処へ』は、いずれも特色ある奇妙な感じの映画です。

『アナザーラウンド』

 デンマークの酔っぱらいの教師たちの映画です。原題は「大量飲酒」英語題は「もう一杯」です。

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 デンマークであっても高校の教師たちは自信を失っているのでしょうか。4人の男たちが集まって愚痴をこぼしています。そのうちにアルコールの血中濃度0.05%に保ち、少し酔っぱらっているほうが「仕事の効率が上がり想像力がみなぎる」という怪しげな説を信じて、自らの体を使って、それを実証しようとします。

 酒を飲んで授業を始めました。かたい雰囲気が取れて、生徒たちからちょっと見直されます。それがどんどんエスカレートしていきました。

 デンマークは幸福度の高い国ですが、正気ではいられない教師たちもいるのか、と思いました。

 高校の卒業式の後のパーティで、生徒も含め、みんな酔っぱらって羽目を外しています。デンマークでは16歳から飲酒可能です。

テーラー人生の仕立て屋』

 何とも奇妙な映画です。ギリシアテーラー(紳士服専門の仕立て屋)を主人公とする映画です。

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 親から店を譲り受けた腕の良い高級紳士服テーラーのニコスは、生真面目にですが、時代の変化と不況によって客がこなくなり、倒産直前です。店や服の生地などが銀行に取り上げられようとします。

 待っていても客は来ないので、材料や道具を積み込んだ屋台を作って町へ出ます。街頭で仕立て屋を始めようとしますが、うまくいきません。

 紳士服専門でしたが、女性服のほうが売れるのに気づきます。隣の主婦にも手伝ってもらって少しずつ売れるようになってきました。

 そこへ花嫁衣裳の注文が舞い込んで、それに応じるようになります。威張った男から幸せを夢見る女性の手助けをする感じです。

 手助けしてもらった奥さんと不倫するなど、ちょっと羽目を外しながらも、時代の変化に対応していくニコスがなんともいい男に見えてきます。

 邦題「人生の仕立て屋」は意味不明です。

『アイダは何処へ』

 ユーゴ紛争(19912001年)を描く映画はたくさんありますが、その一つで実話だそうですが、小さな町の顔見知りの人々が殺しあうというのは、こんなにも悲惨なのかと思いました。

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 1992年に独立宣言を出したボスニア・ヘルツェゴビナの東端、セルビアに近い小さな町スレプレニツァで、セルビア人のスルプスカ共和国軍が約8000人のムスリムを虐殺しました。これは事実だと国連もセルビア人議会も認めました。

 映像では殺すシーン等は見せません。しかし全編、緊迫感が張り詰めた映像です。

 19957月スレプレニツァは国連軍によって「安全地帯」にすると広報されましたが、どんどんスルプスカ軍が町に侵入して破壊、殺戮を行います。直前にセルビア人が殺されていて、その報復を狙っています。

 市長は国連軍にスルプスカ軍を抑える空爆を要請しますが、無視されます。その市長は真っ先に殺されました。

 スルプスカ軍の司令官は、国連軍に対して、国連基地内と、その周辺に集まった難民にムスリム兵士がいないか、調べることを要求しました。さらに難民を「安全地帯」へ移送することを高圧的に提案します。

 現地の司令官は、援軍要請にもこたえない本部に失望し、少数で武力では抑えが利かないままに、危険な要素を感じながらも容認してしまいました。

国連軍の通訳の仕事をしていた元高校教師のアイダは、その危険性を察知して、自分の家族だけは移送バスに載せないようにと必死で奔走します。

 体育館に住民を追い込んで、機関銃をアップにして火を噴くところだけにとどめて居ますが、その隣のバスケットボールのコートでは子どもたちが遊んでいました。

 紛争が終結したのち、アイダ一人が生き残り、自分の家に帰りますが、そこには他人が住んでいました。怖い映画です。