2022年3月に見た映画その2

 3月の残りは『さいはての用心棒』『海辺の彼女たち』『モーリタリアン黒塗りの記録』『コレクティブ国家の嘘』の4本です。

 仕事を辞めたらブログを書く時間が増えると思いましたが、そうはなりません。今までしていなかった他のことを始めたので、そちらに時間を取られました。

 今回の4本はいずれも特徴ある面白い映画でした。

『さいはての用心棒』

 マカロニ・ウエスタンの大スター、ジュリアーノ・ジェンマの主演ものです。

 南北戦争北軍の勝利で終結しそうな時期、南軍の残党が北軍の砦に突入しようと計画しています。北軍はすでに知っていて待ち受けてせん滅を図ろうとしています。

 その無謀な計画を、捕虜となった南軍将校(ジェンマ)が阻止しようと伝令となって向かいますが、南軍北軍の中に裏切者がいて・・・、というちょっと込み入った話になっています。楽しく見ることが出来ました。

 用心棒は何処にも出てきません。

『海辺の彼女たち』

 市民映画劇場で上映しました。ドキュメンタリータッチの劇映画です。

病院の受付

 ベトナムから技能実習生としてやってきた3人の若い女性が、最初の職場から逃げ出すところから映画は始まります。パスポート等の身分証をおいたまま不法就労の職場へと向かいます。全体像は見せませんが、そこには仲介をする組織があると描いています。

 三か月しか持たなかった職場は、どのようなところかは一切描きません。

 彼女たちの新しい仕事は、北の漁港の町で獲れた魚の洗浄と積み出しでした。朝早い重労働で、寝起きするのは倉庫をカーテンで仕切ったような粗末なところです。でも彼女たちは楽しそうです。母国に帰る夢を語るシーンは若い娘そのものです。

 前の職場がどれほど酷かったのか想像させます。

 しかし一人が妊娠していることが分かります。そこから日本における彼女たちの存在がどのようなものか、描かれました。

 印象的なのは、病院に行ったときに受付が、彼女の病状を聞く前に保険証を持ってくるようにと追い返すところです。「皆保険」の実態が明らかです。

 そして彼女たちはお金を家族に送るために働き、家族もそれを頼りにしているということです。

 この映画は、そこで終わりました。機関誌の解説は日本を世界第4位の移民大国と紹介しています。その実態を見事に描きました。 

『モーリタリアン黒塗りの記録』

 実話に基づく映画です。

 20019.11米中枢同時テロに関わったとして、キューバグアンタナモ収容所に拘束されたモーリタニア人モハメドゥ・ウルド・スラヒさん(50)の手記に基づいています。

 彼は、9.11から2カ月後の11月、母国のアフリカ北西部モーリタニアで現地の警察に拘束され連れ去られます。そのままヨルダン、アフガニスタンの基地を経て、翌年にグアンタナモ米軍基地にあるテロ容疑者収容所に送られました。携帯の通話記録などから国際テロ組織アルカイダとのつながりを疑われ、テロ犯人と決めつけられたのです。

 彼は「手錠をかけて宙づりにされたり、冷たい部屋で20時間以上も同じ姿勢を強要されたり、非人道的な尋問を繰り返された。女性兵士による強制的な性交などの性的虐待」も受けます。

 初めは弁護士をつけることも認められなかったが、家族の依頼で05年にナンシー・ホランダー弁護士(ジョディ・フォスター)が弁護を引き受け、徐々に状況は変わります。

 弁護士は拷問や自白の捏造ねつぞうを明らかにするため、公文書開示請求を重ね、機密文書約13万ページを公開させます。

 「違法監禁と拷問を許している」と米国の地方裁判所に提訴し、裁判所は10年「アルカイダの一部との政府の主張は根拠がなく、スラヒさんの拘束は不当」と釈放を命令しました。しかし検察側は控し、16年に釈放されるまで、拘束はさらに6年間続きました。

 米国の検察側に立つ人(友人が9.11の犠牲者でテロリストを憎む)の矛盾(結局、米軍を辞めます)も描きました。

 日本でも9.11の後にテロ対策が厳しくなりますが、こんなことがあるのです。米国は表と裏の顔を知る必要があります。

 さらに一言。グーグルでは「モ―リタリアン黒塗りの記録 映画」で検索すると、10件ほどしか出てきません。ウィキペディアも上がってきません。ヤフーもそうです。マイクロソフトビーイングではたくさん出て来ます。なぜだろう。

『コレクティブ国家の罠

 ルーマニアドキュメンタリー映画です。

  ブカレストの「コレクティブ」というクラブで火災が発生し、27人が死亡、180人が負傷します。その後、複数の病院で軽傷の患者も含め37名が死亡します。

 この異変を感じたスポーツ紙記者が、調査に入ります。それをカメラが追いました。

 異常な事実が明らかになります。消毒液を希釈していたのです。それで院内で感染症が広がり死者が増えました。

 それには製薬会社、医療関係者、政府が関与していました。彼らは当初、否定しますが内部告発もあり、ついにそれを認めます。市民の怒りが広がり、担当大臣も首相も辞任します。 彼らの癒着と腐敗、不正な金銭も明らかになり、自殺者も出ます。 

 その後、選挙がありましたが与党の勝利は揺るぎませんでした。告発した記者には「家族が危ない」という警告がありました。

 ものすごい映画です。政府を含めた医療関係全体の腐敗が明らかになっていくのが描かれます。どういう展開になるのが分からない状態で映画が撮られていますから、ちょっと煩雑で分かりにくいです。しかも説明的なナレーションもありません。