「記憶せよ、抗議せよ、そして生き延びよ」小森陽一対談集 シネ・フロント社

 対談相手がすごい。井上ひさし黒木和雄渡辺えりジャン・ユンカーマン井筒和幸高畑勲、班忠義、山田洋次といったメンバーだ。そういう人と話をして色々と聞きだせるというのが小森陽一さんだ。シネフロント社のいい企画だ。
 本のタイトルは、井上ひさしの『父と暮らせば』からのもの。取り合えず書く対談のタイトルと見出しを書き出します。感想は追々入れていきます。
井上ひさし「『父と暮らせば』と原爆、戦争、憲法九条
記憶せよ、抗議せよ、そして生き延びよ―原爆は今も、爆発し続けている。
黒木和雄「私にとって戦争とは」
生き残った者の死者に対して申し訳ないという思いの”向き”によって戦争の後の生き方が大きく変わってくる。
渡辺えり「『非戦を選ぶ演劇人の会』と憲法と」
対話によって成立する演劇は、武力攻撃による外交手段に反対します。演劇は戦争に反対します。
ジャン・ユンカーマン「『映画 日本国憲法』:世界から見た私たちの憲法
いま憲法を生かそうという運動をとおして一人ひとりが民主主義的に生まれ変わりつつある。リーズンのある世界が生まれつつある。
井筒和幸「『パッチギ!』の時代と現在」
感覚と言葉が同時にあったあの時代 完全に思考が停止状態の現在 この映画はそういう日本社会へのパッチギだった。
高畑勲「『王と鳥』をめぐって」
詩人プレヴェールが一貫して問題にしてきた「戦争」と「社会構造の垂直性」―罠に嵌められつづけているにもかかわらず また罠にはまってしまう現実を『王と鳥』は私たちに見せてくれている。
班忠義「『ガイサンシーとその姉妹たち』をめぐって」
班監督が積み重ねてきた人と人との関わり合い自体が、このドキュメンタリーの中で性奴隷にされた女性たちと旧軍人たちとを出会わせているのだと思います。
山田洋次「『母べえ』を語る」
同時代的に懐かしみ、心を痛めながらこの映画を見る観客たちが、改めて若い世代に戦争体験をどう語っていくのかということが大事なことなのだと思います。