1月1日の社説

 [神戸][朝日][毎日][読売][日経]の一日付けの社説を読み比べてみました。傾向が別れているように思います。これは特定秘密保護法に対する態度から来るものではないか、と思いました。
 [神戸]は「私たちのあした」というタイトルで4日間の連載ですが、1日は「時代の曲がり角 足元見つめ、しなやかに生きる」という見出しです。
 特定秘密保護法を正面から批判して「人権より国家優先の考え方が潜んでいる」「戦後の平和国家としての歩みと違う道に進もうとしている」と現在の政治状況を明快に批判します。
 戦前は「東京の1部は華やかでも農村は貧し」いもとで「軍部への期待が高まった」。現在も「東京への集中が加速」する一方で「人口減で消滅が避けられない地域が続出する」と、社会的な危機が何を求めるのか警鐘を鳴らす。
しかし、現在の社会は兵庫県内でもNPO法人が二千を超え、厳しい中でも、民主主義の醸成から幅広い市民活動があるといいます。
 [毎日]も安倍政権を批判します。「民主主義という木 枝葉を豊かに茂らせよう」という見出しです。
 「指導者が、強さを誇示する社会」に対し「違うと、と私たちは考える。強い国とは、異論を排除せず、多様な価値観を包み込む、ぶあつい民主社会」であり「寛容で自由な空気」といいます。
 まったく同感です。
 靖国参拝に対して、多様な世論を敵味方に二分し、対話より対決、説得よりも論破の政治の象徴、と厳しく批判します。原発集団的自衛権と同様に「私たち一人ひとりの未来を大きく左右するテーマ」とまで言い切りました。
 見事です。
 そして民主主義社会を例えて「幹しかない木ではなく、豊かに枝葉を茂らせた木を、みんなで育てるしかない」、その枝葉が私たちです。
 [朝日]は「政治と市民 にぎやかな民主主義」で、[毎日]と似ていますが、真正面からの強い批判を避けています。
 古い都市計画道路の建設に対する反対運動を引き合いに出して、「民主主義社会で市民が疑問を感じる政策を政府が進める」のが特定秘密保護法と「同様の構図」だといいます。
 ちょっと違うのではないかと思います。
 それでも議会と選挙以外で市民が政治に働きかけること、「投票日だけの『有権者』ではなく、日常的に『主権者』として振舞う」を強調します。
 国政選挙がない2年半を「『選挙での多数派』に黙ってついていく期間にはできない」といいました。
 常識的な社説ですが、歯切れが良くありません。
 [日経]は「飛躍の条件伸ばす 変わる世界に長期の国家戦略を」ということで、経済成長ばかりです。
 「国際社会で信頼を得るには、文化や価値観など」といいながら、日米同盟への依拠と「強い経済」しか言いません。長期的な国家戦略が安倍政権に欠けている、というものの[日経]の指標は投資収益をもたらした企業のそれをいうものです。
 その発想は、かねかねかね金です。
 [読売]は「日本浮上へ総力を結集せよ 『経済』と『中国』に万全の備えを」ということで、全面的に安倍政権を支持しています。 
 日米同盟、規制緩和と民間活力、原発再稼動、集団的自衛権辺野古移設、中国押さえ込みと古色蒼然の社説です。