市川昆作品集

1月31日〜2月6日まで元町映画館で、映画サークル企画の『市川昆作品集』6本の上映が始まりました。上映時間、作品は映画サークルのHPをご覧ください。
http://www.kobe-eisa.com/
私は31日にいって『鍵』『野火』『黒い十人の女』を見てきました。
映画サークルでは2013年今井正、2014年木下恵介と、日本映画黄金時代の名作、メルクマールとなる作品を上映してきました。
今年の市川昆もいい映画がそろっています。是非ご覧ください。
戦争をどう描くか

この3人の監督は戦前戦後と活躍していますから、当然、アジア太平洋戦争の映画を撮っています。今井正また逢う日まで』、木下恵介『陸軍』そして市川昆『野火』とそれぞれ代表作となる特色ある映画です。
『野火』は大岡昇平の原作で、フィリピン戦線を描いたものです。映画の大半は戦闘らしき戦闘もなく、日本兵たちが、部隊の編成もままならず、ひたすらジャングルをさまよい、極限の飢えと病気、怪我でばたばた倒れていく、という映画です。
服も靴もぼろぼろ、兵隊と言うよりも乞食の群れです。
「これが戦争だ」と強く主張します。
昨年邦画の興行成績1位の『永遠のゼロ』が戦争を綺麗な映像で描いたのと対照的です。
どこかにユーモアが漂う
『野火』は悲惨な戦場の映画です。アジア太平洋戦争全体を描いたものではありません。無謀な侵略戦争であった、なんてものはありません。
ここでは、破壊された、むき出しの人間性が描かれるのですが、なぜかおかしみがあるのです。
腹にタバコの葉を巻いて、人を遣って食べ物と交換する男がいます。彼は自分ではタバコを吸わないのです。ですが「タバコ好きは食べ物と交換する」と信じ込んでいます。
『鍵』は谷崎潤一郎の原作です。没落した上流階級の男(中村雁治郎)が、若く美しい妻(京マチ子)に、娘婿候補の男と絡ませて嫉妬心を掻き立てようという「変態」心の映画です。夫婦と娘、娘婿候補、そして年老いた女中という人間関係全体がユーモアです。