2021年6月に読んだ本その2

6月の残りの本『海はどうしてできたのか/藤岡換太郎』『世界6月号』『人新世の「資本論」/斎藤幸平』を書きました。『世界』は関心のある記事、論文だが難しいし量も多い。

『海はどうしてできたのか/藤岡換太郎』

 この本は、海に焦点を当ててはいますが、地球の歴史そのものを書いていました。つまり海は地球そのもので、その成り立ちが地球の特徴ということでしょう。

 藤岡さんの本は3冊目ですが、難しいことを分かりやすく書いてあります。新しい言葉も知りました。

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 地球誕生から現代までを1年に例えます。46億年を365日変換して、地球と海の歴史を書きました。放射性同位元素の崩壊による年代測定、地球由来の岩石だけでなく隕石を測定して46億年というのが確定します。

 地球誕生と同時に、隕石の雨が降り続き、地球を熱してマグマオーシャンができます。表面から23百㎞まで溶けたマグマになります。地球の半径64百㎞です。

 「海は鍋」海の上に陸が浮かび、鍋は水によって満たされます。最初は「猛毒」の海で、その後、色々なものが出入りして現在の海ができました。

 火山活動、風や雨が運んできたもの、河川が運んできたもの、宇宙から飛んできたもの、様々あります。

 今後10億年後海は干上がる。50億年後太陽が爆発する。地球温暖化で水が枯渇する未来図が予想されます。

 以下は地球誕生を11日、現在を1231日にした年表です。

112日:月の誕生。巨大隕石が地球にぶつかり一部がはぎとられて月になった。

29日:海の誕生。海、陸。大気、内部構造が重力による物質再配列。

225日:生命の誕生。「共進化」海、大気、陸そして生命が相互作用によって進化していく。

531日:酸素の誕生。光合成をするシアノバクテリア発生。海が変わる。

83日:超大陸形成

1116日:最初の生物大量絶滅(Ⅴ-C境界)。カンブリア紀の生物「大爆発」

1212日:海洋無酸素事件。4度目の大量絶滅

1213日:恐竜出現

1226日:恐竜絶滅(K-T境界)哺乳類の対等

1227日:ヒマラヤ山脈の誕生 海洋深層水の成立

1231日:午後1137分 現代型人類の誕生

 

『世界6月号』

今月の特集は二つありましたが、私の手に負えなくて要約できません。というか、焦点が分からないまま、読んでしまいました。『母の褒め殺し――現代日本映画における“毒母”など/木下千花京都大学)』という映画関係論文もありましたが、これもうまく受け止めることができませんでした。

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   それで特集の扉の言葉を載せて、あとは、気になった論文と連載の『メディア批評』『日本を診る』の紹介です。これでも長くなりました。

【特集1 イベント資本主義――その破局
 パンデミックのもと、迷走がつづく2020東京オリンピック
 責任者たちによる女性蔑視発言などのスキャンダルが続発するこのメガイベントは、招致の段階から疑惑と虚偽にまみれてきた。スポンサー企業やメディアの流す美しいイメージで糊塗されてきたが、限界に達した観がある。
 大規模なイベントの開催により、公的資金を集中的に投資して都市の再開発やインフラ整備を急速に進める手法――イベント資本主義は、気候変動やパンデミックによって、その虚構性が明るみに出てきた。
 いまこそ、イベントに依存するのではない都市のありかたを考えたい。
 あるべき都市の姿への私たちの想像力を取り戻すために、特集する。

【特集2 気候変動とエネルギー】
 もはや、この流れは止まらない――脱炭素社会への国際的な動きが加速している。
 気候危機を前に世界中の若い世代が声をあげ、アメリカと中国もこの点では一致し、他の多くの国々も、機を見るに敏な多国籍企業や投資家も含め、脱炭素はまさに国際社会の合意となった。
 この情勢のもと、ついに日本政府も重い腰をあげた、かのように見える。
 実際には、産業界や経産省に根を張る守旧派は、石炭火力やガソリン車への未練を残し、再生可能エネルギーについては「やらない理由」を模索しつづけ、実現するかわからない新技術を称揚している。そこでは脱炭素は「CO2を出さない原発」を推進する契機として利用されるばかりだ。
 この夏、エネルギー基本計画の改定が予定され、議論が進められている。
 基本計画の行方は、日本が真にスタート地点に立てるかどうかの分岐点となろう。
 その論点を整理し、進むべき道筋を考える。

【〈311の検証を〉この原発を動かしてよいのか?――新潟県原発検証委員会をめぐって/池内 了(科学者)】

 柏崎原発の事故などに対する東電の隠ぺい体質に対し、歴代新潟県知事は第3者委員会をつくって、県民の命とくらしを守る施策を遂行してきています。この委員会の総括責任者の池内先生が書きました。

 県の担当職員が「検証を早めに終わらせようととの意図」を感じ、「中央の方針を忖度」するなと警告しています。
【《新基地建設と遺骨》「遺骨まじりの土砂――本土が問われている/渡辺 豪(ジャーナリスト)」「〈インタビュー〉戦没者の尊厳は守られなければならない/具志堅隆松(「ガマフヤー」代表)」「沖縄(シマ)という窓――人道上許されない絶対的愚行/親川志奈子(沖縄大学非常勤講師)」】

 沖縄戦で戦死した全国から徴兵された兵士、沖縄県民の遺骨が放置されている地区の土砂を米軍の辺野古新基地の埋め立てに使うという愚行の告発です。
【〈驚愕の事実〉コンピュータ・システムがもたらした冤罪事件――英国史上最大の誤判スキャンダルの衝撃/指宿 信(成城大学)】

 英国の郵便局で使われていた現金支払いシステム(ホライゾン)に重大な欠陥があり、そのために生じた決算の赤字を、元委託郵便局長などに被せ、詐欺や窃盗等で有罪とされて数百万円の賠償させていました。

20199月それを被告たちが再審を請求して無罪を勝ち取った裁判です。

コンピュータ・システムに欠陥があることがわかっていたのに、英国の郵便公社は、現場の局長さんたちにすべての責任をかぶせました。この冤罪のために破産した人や自死した人といいます。

2013年ごろに調査して、バグの可能性が分かっていたのに公社は隠ぺいしていました。
自治体としてパンデミックに立ち向かう――最終回/保坂展人(世田谷区長)】

 4月号~6月号。各月「PCR検査の拡充」「社会的検査の拡充」「ワクチン接種へ」という見出しでした。世田谷区長としてコロナ感染拡大に対応した奮闘記です。誠実な人だろうと思いますが、手元のことに終始し、世田谷区ではあまり重要でなかったかもしれませんが、例えば国の病床縮減、保健所削減の政策、またオリンピック強行について一言もありません。それが不満です。でもリアルな自治体の動きはわかりました。

 見出しを見たらわかるように、保坂さんは世田谷の職員体制を拡充しながらPCR検査を拡充するという、国とは違う動きをされました。そして国の政策にも影響を与えています。

 最終回はワクチン接種に入ってきて、ワクチンの保存と運搬について、国の指示のあいまいさが地方に混乱を招いたと批判しています。

 これを読むと、テレビには国と知事しか出てきませんが、実際の対応は市町村で対応していて、それがいかに大変かということが分かります。

 この論文とは関係ないですが、大阪府知事・市長がいい加減なことをテレビでいう度に現場、職員は大変な混乱があったと想像できました。
【メディア批評【第162回】神保太郎(ジャーナリスト)】

2020年の総広告費は61594億円(前年比88.8)。マスコミ4媒体(新聞・雑誌・テレビ・ラジオ)は大きく前年割れ、その一方でインターネット広告は22290億円で4媒体とほぼ同じ。

総務省の担当課長の話、NHKの「自主自律は放送番組の編集の話。人事も金も縛られている」

・デジタル庁はコロナで国民の中に広がった不安に付け込んで、個人情報の産業利用を進めるもの。
片山善博の「日本を診る」【139】多発する法案ミス 国会と霞が関改革の契機とせよ/片山善博早稲田大学)】

 多忙と労働意欲の低下が現在の事態を招いているという診断ですが、それを克服するには「ミスがあることを前提に国会は審議する」「部分改正方式を全文改正方式に改める」ことと言っています。

  『人新世の「資本論」/斎藤幸平』

 新書本で、これほどはっきりと資本主義との決別を主張して、なおかつ売れたのは快挙です。

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 昨年の9月出版で、早くから評判になっていましたし、私の周りでも「よかった」という声を聴きました。斎藤さんがNHK『百分で名著』でマルクスの『資本論』の開設をしたものを録画しました。なかなかよかったです。

 ようやく読みましたが、良かったです。資本主義の次の生産関係をかなり鮮明に考えることができました。

 内容はかなり刺激的です。はやりのSDGs(「持続可能な開発目標」20159月の国連サミットで採用された今後の地球、人類を守るための目標、基準)を「麻薬」と切り捨てました。

 地球温暖化を食い止め、人間が住める地球環境を守るためにほとんど時間がないので、現在の資本主義の転換が急務です。そのためには資本主義というシステムそのものをやめて、別の経済システム、労働システムをを構想する必要があります。現在の社会主義のイメージが悪すぎるので、本来の社会主義の政治と経済のイメージを、マルクスの考え方を引用して提示しています。

 斎藤さんが提起する、出資と労働が一体であり、企画、計画、実施もリンクする協同組合というのはとてもいいと思いました。