ちょっと時間がかかりましたが11月の続きを書きました。これで次に行けます。
『桂歌丸正調まくら語り~芸に厳しくお客にやさしく~/桂歌丸』『異形のものたち 絵画のなかの怪を読む/中野京子』『世界11月号』の3冊です。
『桂歌丸正調まくら語り~芸に厳しくお客にやさしく~/桂歌丸』
やはり「まくら」は面白い、噺家の人柄がよく出ます。「にっかん飛切り落語会」(1976年5月27日~2011年8月29日)から32編を入れています。
この本は前書き後書きを六代目三遊亭円楽が書いています。一緒に落語会もしていたようで、笑点では罵り合っていましたが、本当は尊敬しあう関係です。
歌丸は米丸の弟子で新作落語系でしたが、後に古典に転じます。円楽は、歌丸を極めてまじめに圓朝の話を掘り起こし円生等の正統派の古典落語を受け継いだ人「楷書の歌丸」という評価をしています。
桂歌丸はいい人だと思いますが、売春については肯定的です。彼は女郎屋の息子として生まれたことを公言し、1956年売春防止法を批判しています。
また下戸であること、夫婦仲もいいし、身の回りから少し社会、政治をチクリといいます。笑点などもマクラのネタにしています。
師匠、先輩から「歌舞伎、芝居を観ろ」と言われたそうで、演技というよりも、役者がどう言う間で、台詞やしぐさをやり取りするか、それが落語の勉強になる、と言っています。
融通無碍に時事問題をとりあげるのではなく、パターンが決まっていたようです。円楽は「このまくらを振ればこの話」と分かるといいます。
『異形のものたち 絵画のなかの怪を読む/中野京子』
欧州を中心に、「人獣」「蛇」「悪魔と天使」「キメラ」「ただならぬ気配」「妖精・魔女」「魑魅魍魎」と分けた異形のものの絵を掲載して、簡単な解説を書いています。
あまり説明の必要はないと思います。何枚かの絵を載せますので、それを見て楽しんでください。
人間の想像力は文化の結実です。浮世絵や水木しげる等が書いた日本の妖怪とは違う西洋の異形たちです。
『世界11月号』
特集は「特集1反平等 新自由主義日本の病理」「特集2入管よ、変われ」でともに興味あるものでした。さらに国谷裕子の「内橋克人追悼」も良かったです。彼は「クローズアップ現代」に20年で46回も出演したそうで。
特集1のリード文だけ書いておきます。
「ネオリベラリズムの嵐が去りつつある。
国際社会において、この数十年にわたって政治経済を席巻してきた新自由主義――格差を増大させ、市民の分断を促し、連帯を崩し、環境・気候を破壊してきた――は、乗り越えられつつある。その中心は、若い世代だ。確実に、新たな社会と経済のありかたを構想すべき季節が来ている。
問題は、日本だ。「生活保護の人に食わせる金があるなら猫を救ってほしい」、「ホームレスの命はどうでもいい」。あるタレントの発言が物議をかもした。屈折しながら社会に内在化した自己責任論が、格差と差別を正当化する。
命は平等でなくてもいいのか。格差とは、平等とは、何なのか。公平ということと何が違うのか。
政治的価値/目標としての平等を、あらためて共有するために、特集する。」
その他の連載の紹介です。
【読書の要諦──ノンフィクション 反骨の人/青木 理(ジャーナリスト)】
信濃毎日新聞の記者だった桐生悠々に関する本を紹介されています。戦前戦中に対峙した人です。青木さんの原点を決定付けた人のようで、現代に引き付けて考えることが大切です。
桐生の子が「自己欺瞞が許容できなかった人間臭の芬々した一言論人」と評しているそうです。
『抵抗の新聞人 桐生悠々/井手孫六』『畜生道の地球/桐生悠々』『新聞記者・桐生悠々 忖度ニッポンを「嗤う」/黒崎正己』『反骨のジャーナリスト/鎌田慧』
図書館で探してみます。
【メディア批評167/神保太郎】
①メディアウォールの無効に沈黙の声を聴く
・NHKが「公共放送」から「公共メディア」にかわり、その「実現へ」と題した文章には「ジャーナリズム」という言葉は1回しか使っていないと指摘。
・「八月のジャーナリズム」でNHKは頑張ったとも。九州大学の生体実験を扱った「しかたがなかったと言うては行かんのです」、親子兄弟が殺し合った「”玉砕”の島を生きて―テニアン島日本人移民の記録」、沖縄を描く「死者は沈黙の彼方に―作家・目取真俊」です。
②「お祭り」総裁選のお囃子メディア
・総裁選報道、アベスガ政権の「不振の根っこ」を掘り起こさない
・八代弁護士の「共産党は暴力革命」は野党共闘と結びつけたと指摘。批判はあるが、八代の言い訳である政府見解「吟味すべき」と言っただけで、歴代の自公政権の野党政策と絡めた詳しく見当がいると思いました。それがない。
・警察人事。警察庁長官も警視総監もアベスガ政権を支えた者がなった。それを指摘する報道がない。官僚支配と三権分立破壊は、総理大臣の人事権にあると
【片山善博の「日本を診る」144】
二つのことを書いています。一つは自民党総裁選挙の正体を指摘。4人とも「実力者とみなされている人が候補の背後や周辺にいて」、強い影響を受け、力を借り、忖度している、といいます。
岸田政権は誕生も、現在の運営もその通りになっています。
もう一つは立憲民主党の準備不足です。「自公政権への批判と不満が野党支持につながらない」といい、過去の失敗を教訓とし、政権を担うために「努力と精進を重ねてきたとの印象は、筆者には薄い」と指摘しました。
その一つが「霞が関との意思疎通の失敗」です。