『ダーウィンと進化論 その生涯と思想をたどる/クリスティン・ローソン、大森充香』『女警察署長 K・P・S/香納諒一』『人を育てる名監督の教え―すべての組織は野球に通ず―/中島大輔』『落語に学ぶ大人の極意/稲田和弘』『五代目三遊亭圓楽特選飛切マクラ集/五代目圓楽』『世界12月号』6冊です。落語関係の本は継続して読んでいます。まぜ前半の3冊を書きます。
『ダーウィンと進化論 その生涯と思想をたどる/クリスティン・ローソン、訳:大森充香』
19世紀の偉大な発見は、K・マルクスの労働価値論、S・フロイトの無意識そしてC・ダーウィンの進化論だと思います。
この本は子ども向けなので、とても分かりやすく書かれていました。
ダーウィンは1809年、上流階級のお金持ちの医師の子供に生まれています。医学や宗教学を学びますが、あまりできの良くない生徒でした。その一方で、小さい時から好きだった博物学への興味がだんだんと大きくなっています。
1831年12月27日~1836年10月2日間の、南米大陸調査を主な目的とするイギリス海軍の調査船ビーグル号に同乗しての世界1周の冒険が、彼の人生を大きく変えました。
南米大陸やガラパゴス諸島等でたくさんの動植物、化石、地質などを実際に見て、標本の収集をしました。大量の資料を英国に送り、また船で持ち帰ります。
この航海作業で、見聞きしたことが彼をまじめな学者に成長させたといいます。そして帰国後、その膨大な資料を整理、分析する中で「進化論」を考えました。
「進化論」が驚くべき思想なのは、遺伝子などがまだ発見されていない時代に仮名が得たということです。さらに言えば、ヨーロッパ社会ではキリスト教の影響力が大きく聖書がいう「神が造った」という思想に反するものは異端と見られて、排除と弾圧の対象となっていました。
彼は、昆虫や魚が大量の卵を産み、生き残るのはわずかであることをヒントに「自然淘汰」を考えます。そして多くの事例を整理、分析、研究して「自然選択による種の変形」という論文を書きました。
しかしこの考え方は聖書の考え方とは真っ向から対立するために、多くの批判を浴びます。ところがダーウィンは論争を好まず、そういう場に出ていったのは、ダーウィンと同じ考え方を持ち積極的に支援していた若い学者、ウォレスでした。
進化論の中心は、生き残るのは強いものでも賢いものでもなく、環境の変化に対応できたもの、ということです。
『女警察署長 K・P・S/香納諒一』
香納諒一はあまり読んだこともなく、この本はKSP(歌舞伎町特別分署)シリーズの一冊で、前に読んだシリーズであるような気がしますが、思い出しません。普通のミステリー作家という感じです。
KSPの署長に就任した村井貴里子が知事によばれて、彼の友人である米国の大富豪が盗まれた高価なバイオリンを密かに探してほしい、という依頼を受けます。それと間を置かず、彼女の部下の刑事に、かねてから指名手配されている中国マフィアの大幹部から、バイオリンの情報提供を強要する脅し(刑事の父を誘拐した)が入ります。
警視庁管轄を超えて関東一円での捕り物です。それなりに読ませました。でも中国マフィア内部の抗争に絡む犯罪で、あまり社会的要素はありません。
『人を育てる名監督の教え―すべての組織は野球に通ず―/中島大輔』
プロ野球、高校大学社会人野球の監督論です。梨田昌孝(近鉄、日ハム)渡辺久信(西武)岡田彰布(阪神、オリックス)小川淳司(ヤクルト)小倉全由(日大三高)榎本保(近大)古葉竹識(広島、横浜、東京国際大)安藤強(ホンダ)を取り上げています。
野球は企業社会に似ているといい、チームや選手に対する監督の役割などを書いています。ですが、野球界全体のこと、プロ野球、ノンプロ、高校大学野球などに対して幅広く問題意識を著者は持っているのか、疑問に思いました。
ある制約の下で彼らは仕事をしているわけで、そういうことを見ずに、個人個人のいい所を書くというのはつまらない、と思います。
また長所の反面「なぜこのようなことを」というのも、裏表であると思います。そこも書かないと面白くありません。また球界にある問題点をどう考えているのかまで、引き出すのが野球ジャーナリストの役割でしょう。
例えば、梨田監督は、いい監督だと思いますが、高校生から入団してきた中田翔をどのように教育したのか、と聞いていません。中田は昨年、チーム内で暴行を働き処分を受けています。高校時代から問題児であり、そのまま現在に至っています。
この取材をした時も、球団内部でも問題行為があったと思いますが、それを知ってか知らずかわかりませんが、触れていません。
古葉監督については、2003年広島市長選挙、2004年参議院選挙で自民党比例区に出たことを聞くとか、そのような愚挙を犯したのか。いい所とおかしなことを併記したほうが深みがあると思うのです。
またアマチュア球界についても、そこが抱える問題、制約などについて彼らがどう考えているのか、そういう質問も必要と思います。
いい人ばかりの評価ではどうかと思いました。