1月の分を積み残していて、なかなか書けませんでしたが何とか形にできました。
『古典落語・上方艶ばなし/藤本義一』『暗約領域・新宿鮫Ⅺ/大沢在昌』『世界1月号』の3冊です。
露の五郎(現、五郎兵衛)の口演を聞いているように読みました。いわゆる下ネタですが、そんなに下品ではありません。24編が収録されています。演目を書いておきます。
『女護が島』『しつけぼぼ』『おさがり』『赤貝猫』『金箔屋』『建礼門院』『茶漬け間男』『風呂敷間男』『左甚五郎』『からくり医者』『お好み吸い物』『揚子江』『松茸』『故郷に錦』『紀州飛脚』『張形』『羽根つき丁稚』『忠臣蔵』『鞍馬の天狗』『逢びき』『反古染め』『猪飼野』『金玉茶屋』『下口』
川柳「弁慶と小町は馬鹿だ なあ嬶あ」は有名です。左甚五郎作の張形の威力、間男される間抜けな亭主が出てきます。物の大きさくらべは中国が凄まじい。
多分新宿鮫シリーズは全部読んでいるはずです。題名を見るとなんとなく記憶に残っています。娯楽ミステリーというか、松本清張のような社会性はあまり強くなく、やくざと中国マフィアなど外国系の犯罪組織が多く出てきます。
謎を解くというよりも、主人公、鮫島のアンテナにかかった連中を、彼が執拗に追及する行動から、次々と事実を集めてきて関係をつないで真相を浮き彫りにする手法です。
文体は読みやすく引き込まれるようにして、700頁もの大部を読み進めました。
鮫島がS(情報屋)からの情報で、覚せい剤売人のアジトになっている違法民泊のマンションを鮫島が監視していると、監視している部屋と違う部屋で殺人が起きました。それが最初の事件です。
殺された人間は身元不明です。部屋の借主、マンションの所有者へと聞き込みを広げていくと暴力団につながってきます。
そして民泊の元締めが何者かに誘拐されるという事件へと発展します。死体の身元が分かり、北朝鮮関係組織、公安警察が絡み始め、そして中国マフィア等も出てきます。さらに鮫島の新たな相棒にも不審な点が出てきて・・・・。
話がどんどん膨らんで、どこへ向かうか、と思います。北朝鮮内部の粛清が日本にも影響し、公安からの介入もあり、複雑ですが事件自体はそう大きなものではなく、収まりました。
大沢在昌の腕はすごいと思います。多くの関係者を数珠つなぎに出し、これだけの登場人物を見事に整理して描きました。話も混線しません。わからなくなると読み返せば辻褄はあっています。
『世界1月号』
特集とか関係なく、面白かった記事を書きます。
【〈座談会〉危急のメディア―何が問題か、どう変えるか/田島泰彦(元上智大学教授)工藤信一(信濃毎日新聞)浮田 哲(羽衣国際大学)】
三人が東京オリンピック、新型コロナ、自民党総裁選、総選挙について日本のメディアについて語っています。
・自民総裁選挙は膨大な報道を行い、それに比べて総選挙報道は薄かった。
・大阪吉村知事の露出は多かったが、検証、論議、追及がない。大阪圏では維新派支配的。
・オリンピックは全国紙の全てがスポンサーになった。オリンピック自体を批判が出来ないメディアは不信を強めた。
・アベスガの9年間で民主主義の基盤がガタガタにされた。メディアも委縮した。権力からの介入に団結して対峙できない。読売、産経が朝日を攻撃、毎日も及び腰。
・「信頼をどう取り戻すのか」では記者やジャーナリストの横のつながり、現場を踏み訓練を積んだプロのジャーナリストの仕事が求められる。
【《選挙結果分析》野党共闘は不発だったのか/菅原 琢(政治学者)】
昨年末の総選挙、政権与党が大きく後退するのではと思われていたのが、自公の若干の後退、維新の躍進、野党共闘(立憲と共産)の後退となったことから、野党共闘を否定的に見る論調が権力者側から出されています。それを分析した記事です。
・小選挙区では与党から、維新と野党共闘が議席を奪った。比例区では野党共闘から与党と維新が議席を奪った。前回の希望の党の票が維新にいった形。
・共産候補の撤退、参入は与党候補の得票率を下げなかったが、野党共闘の成績向上につながった。
・維新は野党共闘を妨げてはいない。
・野党共闘の課題は「比例区の結果に明確に表れたその基本的な得票率、支持率の低さ」であり「与党に代わる有力な選択肢」となれるかどうかである。
【片山善博の「日本を診る」【146】厚労省職員が国会議員の挨拶文を作成していたことの意味を問う/片山善博(早稲田大学) 】
国家公務員が与野党議員の挨拶原稿を書いていたことについて、厚労省事務次官の「公務員の仕事として」「おかしくなく」という見解に対して、片山さんは、こんな人が「次官であってはならない」と断じます。
理由1=外部からの要請で業務以外をしてはならない。「職務専念」義務違反。
理由2=立法と行政の緊張関係をそこなう。トップにはケジメと毅然とした姿勢が必要」