7月の残りは5本ですが、今回は二本を書きました。
『みかんの丘』
例会でとてもいい映画ですが、どう評価し評論するかは難しいと思いました。それはあまりに上手に作りすぎているためです。

旧ソ連を構成したジョージア(かつてグルジアと言った)の内戦を描いたものです。激しい銃撃戦もありますが、実際の戦闘というよりも、戦争の愚かさを寓話的に表現した映画であるからです。
ソビエトが崩壊した後1992年、ジョージア内にあるアブハジア自治共和国が独立しようとしたことに対し、ジョージアは武力で弾圧し、ロシアが支援に回りチェチェン共和国から傭兵を送り込みます。
その地方にはエストニア人が移住してみかんを作っていました。しかし内戦が激しくなってほとんど帰国しています。収穫を目前にしてわずかな農民が残っていました。
彼らの家の近くで戦闘があり、虫の息であったジョージア軍兵士と、負傷した敵対するチェチェンの傭兵を、エストニアの老人が家に連れて帰ります。彼は「家の中では一切争うな」といって二人を介抱しました。最初はいがみ合う二人ですが、落ち着きを取り戻しお互いを理解し始めます。
しばらくしてロシア兵がやってきて、味方であるはずのチェチェン人を愚弄したことで、突然に激しい銃撃戦になりました。
なぜ殺し合うのか、その無意味さと愚かさ、悲しさの一方で、人間はわかりあえる、それを感動的に描きました。
見た時はとてもいい映画だと思ったのです。人間の良心は信じることが出来る、それが伝わりました。しかし現実は難しく、パレスチナに対するイスラエルの侵略、ウクライナの酷い殺し合いを見ると、一人一人の人間の問題ではないのです。
政治と無関心を考えてしまいます。
『ブラックボックス音声分析捜査』
飛行機事故の謎を探る調査官の話です。

飛行機には機長などの会話、機内の様子を録音する装置ブラックボックスがあるのは知っていました。それを分析する彼らを音声分析官と呼ばれるのを知りました。ごく小さい音も聞き分け、その意味を読み解きます。そして事故の原因を究明するのです。
これはそんな彼らを描きました。
最新鋭の飛行機事故があって事故分析が始まりました。しかし突然に責任者が失踪します。彼に嫌われていた天才的な聴力を持つ男マチュ-が、後を引き継ぎます。彼がだんだんと真相に迫っていく様子を映画は描きました。
最初はテロリストによるものかと思わせましたが、ブラックボックスとは別の、乗客が事故寸前に家族に送っていた留守電が手に入りました。マチュ―はわずかな違いを聞き取り、ブラックボックスの情報がおかしいと感じます。そして事故の真相を隠蔽しようとする企業犯罪に突き当りました。
最後は意外な終わり方をします。でも面白い映画でした。
高い能力を求められる専門家は現代の職人です。「正義」とまでは言いませんが、この映画ではあらゆる手段を使って事実を拾い上げて真実に迫ろうとし、その結果として企業犯罪を暴きました。