『オッペンハイマー』『ミルクの中のイワナ』『クラユカバ』『ペトルーニャに祝福を』『ラ・メゾン』『プリシラ』6本でした。見たいという映画が少なかったので、目標としている7本に届きませんでした。
例会である『ペトルーニャに祝福を』が意外な面白さを持った映画でした。あとは『オッパンハイマー』です。これは西神ニュータウン9条の会HPに書いたものを載せます。ちょっと長くなるので2回に分けます。
『オッペンハイマー』
この映画は、米国など海外では高い評価があります。しかし原水爆を扱った映画としては、私は物足りないと思います。監督がヒロシマナガサキをどう思っているのかがわかりません。

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核兵器の残酷さを世界へ
3時間を超える大作です。「原爆の父」と呼ばれる天才的物理学者のロバート・オッペンハイマーの生涯を描く伝記映画でした。
映画は、戦中の原爆開発を進める時期と、戦後に彼がスパイとして査問される時期を交錯するように作られ、しかも関係する人が大変多いために、ちょっとわかりにくくなっています。
第2次世界大戦、ナチスドイツが欧州を席巻していた時期、彼らが原爆をつくろうとしていることを察知した米国は、なんとしてもナチスよりも早く原爆開発しようと1942年マンハッタン計画を推し進めました。
その科学者のリーダーとしてオッペンハイマーが選ばれます。彼は理論物理学の研究者として高い評価を得ていましたが、米国共産党の集会に出るなど左翼的な思想の持ち主です。それは承知の人選でした。
オッペンハイマーは、43年にニューメキシコ州の荒野ロスアラモスに巨大な町を造り、研究所を創立します。米国や連合国から優秀な科学者を集めて開発を推し進めました。
1945年5月にドイツが降伏したのち、7月にトリニティ実験を行い、その完成を確認しました。
原爆は広島、長崎に投下され、オッペンハイマーは「原爆の父」と褒めたたえられます。しかし彼は「私の手は血塗られている」とトルーマン大統領に訴え、戦後は水爆開発に反対する行動にでました。
そしてオッペンハイマーはスパイの容疑で査問にかけられます。彼の目の前で、近しい人々がさまざまな証言をしていきました。
核兵器廃絶をもっと強く
米国アカデミー賞を初め、世界の映画賞を受賞しているように、傑作映画です。オッペンハイマーの人柄の描写や人生の毀誉褒貶、米国政治の汚点である赤狩りの本質にも迫っていました。
しかし現在の核兵器廃絶の運動を、米国世論や世界各国に強く訴え、核保有国の国民感情や情勢を変えるものか、と言えば「弱い」と思いました。
原爆の威力を、その実験風景によって描き、オッペンハイマー自身や科学者の言葉で、恐ろしさを表現しています。しかし映像がありません。人間の上で爆発させた悲惨な現実、広島長崎の街や被爆者の姿を見せません。
「原爆は戦争を終わらせ、米兵の命を救った」と信じている多くの米国民には、これが限界かもしれません。映画は少なくともそれは否定しています。
しかし世界で上映される映画に、日本人の多くが知っている被爆者の映像を出してほしい、と思いました。それがウクライナ、中東で高まっている核兵器使用の危機を防ぐ力になります。
『ミルクの中のイワナ』
渓流に住むイワナの生態、人間との関係を撮ったドキュメンタリーです。題名はコナン・ドイルのシャーロック・ホームズ・シリーズに引用されている言葉で「状況証拠しかないが問題が存在することは明白である」という比喩で使われているそうです。

海に降りなくなったサケ科の魚であるイワナの生態が紹介されます。小さな日本列島の中でも河川の系統によって独自の進化をしていることは、意外でした。魚は環境による影響を受けやすいのです。
それよりも人間とのかかわりで、漁獲高を維持し、種の保存にも役立つと思う稚魚の「放流」はあまり役立っていないと知りました。
自然、動物を対象としながら、自然科学だけでなく社会科学の視点を持ったドキュメンタリーでした。
『クラユカバ』
アニメーションです。国際映画祭で賞を取った映画で、監督も高く評価されているという宣伝文句に惹かれてみましたが、よくわからない映画でした。絵や動きは魅力的でした。でも全くの空想世界であり、映画に出てくる人々は何を目的に動いているのかもわかりませんでした。
昭和の雰囲気を持っているのですが、ダメでした。