キネマ旬報「弁護士布施辰治」の紹介

 キネマ旬報の2月上旬号に渡部実さんが「弁護士布施辰治」の紹介をしています。それは映画の紹介としては、きわめて普通のないようです。彼は布施辰治のことは知らなかったと正直におっしゃっているし、私もまったく知りませんでしたから、その点は「お互い勉強が足りませんな」ということで結構結構となるはずでしたが、後半で映画の内容ではなく、現在の検察の批判になるところで、私は愕然となったのです。
 つい先ごろの厚生労働省局長のでっち上げ事件を指して、検察は何をやっているのか、国民から信頼を失うと言う批判をしています。
 私は、このおっさんは何を能天気なことを言っているのか、と思いました。仮にも映画評論家を名乗り、大学の講師にもかかわらず、戦後のさまざまな謀略事件に検察がいかに手を貸したのか知らないのか。あるいは松川事件を描いた山本薩夫『にっぽん泥棒物語』を知らないのか。今井正であるとか熊井啓の映画を見ていないのか。最近では周防正行『それでもボクはやっていない』があるが、それをどう見たのか。
 さらにいえば『弁護士布施辰治』で法廷で対立した検事や裁判官はその後どういう仕事をしているか。ちょっと考えればわかる問題だ。それをいまさら、今回の厚生労働省局長の事件で気づいて、検察の立場や役割に対して、いまさら批判的立場をとるのは、馬鹿じゃなかろうかと思ってしまう。
 すみません、乱暴な言い方で。でも私はこのような「映画評論家」に腹が立ちます。