6月の映画

『君よ憤怒の河を渡れ』『妻よ薔薇のように 家族はつらいよ3』『ビューティフル・デイ』『恋とボルバキア』『大英博物館プレゼンツ 北斎』『万引き家族』『獄友』『私はあなたのニグロではない』『50年後のボクたちは』『マルクス・エンゲルス』『空飛ぶタイヤ』『焼肉ドラゴン』12本、今月は5週あったので、けっこう本数を見ました。中身もそれぞれ多彩で、どの映画もそれぞれ面白く楽しめました。
冤罪に怒り
『大英…』『獄友』『私は…』はドキュメンタリーですが、全く毛色の違う映画です。中でも『獄友』が一番よかったですね。

殺人事件の冤罪被害者の袴田巌袴田事件石川一雄狭山事件菅家利和足利事件)桜井昌二・杉山卓夫(布川事件)の交友を描きます。彼らはとても親しい間柄でお互いを刑務所に入っていた獄友と呼び合っているのですが、笑い話のように自分やお互いの身の上を茶化します。
冤罪を鋭く告発するのではなく、刑務所ではどんな風だったかを思い出話をし、桜井さんなどは「捕まってよかった」などといいます。
彼は不良で、あのままだったら本当に犯罪を犯していたよ、というのです。歌が好きで刑務所にいた時代、無罪が確定したときのことを歌にして、そしてコンサートまで開きました。
5人の中で袴田さんが一番大変です。拘留期間が長く死刑判決だったので、毎日死の恐怖に置かれていて、心の傷がとてつもなく大きくて普通の精神状態に戻るのに時間を要しています。
警察、検察が証拠をねつ造したり、拷問で自白を取ったこと、それを裁判官が見過ごすことで冤罪が生まれています。普通の暮らしをしていて、突然まったく身に覚えがないことで罪に問われるのですから、想像すると恐怖に駆られます。
でもこの映画は、それでも「人間は信じられる」言っているようです。
家族はどう描かれたか 
『妻よ…』『万引き…』『焼肉…』は家族の映画です。

それぞれどのような家族が描かれたかは、映画サークルの機関紙などまた別のところで批評したいと思います。西神9条の会HP7月号に『万引き家族』を紹介していますので、それも見てください。
ここでは簡単な紹介です。『妻よ…』は普通のサラリーマン家族、祖父母、夫婦、兄弟、子どもという3世代が家族です。『万引き…』は、いわば偽家族が片寄せあって生きる姿を描きます。『焼肉…』は在日の家族です。生きている時代は戦後で、ちょっと幅はありますが同時代といえば同時代です。
『妻よ…』コメディタッチで世相に対する批判はあまり出しませんが、あとの二つは経済的に最下層に生きる人々を描きますから、抉るような怒りが見えます。でも生きることを肯定するとてもいい映画です。
大企業優遇社会
空飛ぶタイヤ』は池井戸潤原作の企業犯罪、大企業に支配された社会を批判的に描く映画でした。三菱自動車リコール隠しと言う実話を元にしていますから、最後は弱いものが勝って良かった、となりました。

映画ですからなにもかも描くわけにはいきません。でもマスコミが大企業に弱いとはっきり批判しています。残念ながら政治家は出てきません。
でも面白く見ました。