『気ちがいピエロ』『オフィサー・アンド・スパイ』『君を想いバスに乗る』『アイム・ユア・マン』『パーフェクト・ノーマル・ファミリー』『サムシンガー1995』『FLEEフリー』『テレビで会えない芸人/松元ヒロ』『イントラダクション』『はい、泳げません』『水俣曼荼羅』の11本です。先月の反動でたくさん見てしまいました。
でもこれはという映画には出会いませんでした。3回ぐらいに分けて書くと思います。
『気ちがいピエロ』
フランスの伝説的な俳優ジャン=ポール・ベルモントが主演し、ヌーベルバーグの旗手ジャン=リュック・ゴダール監督の代表作です。
でも私にはその良さがわかりません。
毎日の生活に疲れた男が、結婚前の恋人と出会い、恋の逃避行をするという単純な話のように思うのですが、そこでの話の展開がよくわかりませんでした。
ただジャン=ポール・ベルモントの動きは面白いし、彼のキャラクターは際立っていました。フランスの大俳優であることだけはわかりました。
『オフィサー・アンド・スパイ』
1894年フランスのドレフュス事件を描くものです。同事件はユダヤ人差別の冤罪事件として有名ですが、どういうものかを、この映画を見て知りました。
ユダヤ系のフランス陸軍大佐ドレフュスが、軍機の情報漏洩したとして終身刑に処されていました。しかし、その後に対敵情報活動の責任者に着任したピカールは、疑問に思い調べなおすと、真犯人は別にいることを突き止めます。ドレフュスは冤罪でした。
将軍に報告するも、隠ぺいすることを求められます。それに従わないピカールは左遷されますが、あきらめずに、情報漏洩事件の真相を追求します。
裁判にもなりますが、ユダヤ人偏見は軍隊だけでなく裁判所にもありました。しかし、それを克服するのがフランスだという、そんな映画でした。
中心人物のピカールは不倫もするしユダヤ人差別意識も持っています。それでも自分の信念を曲げず、損得抜きの人生を貫く人でした。
ポランスキー監督はポーランドから米国に渡ったユダヤ系で、映画監督としての票かは非常に高い人ですが、「少女淫行」疑惑など、波乱万丈の人生です。
なぜこの映画をこの時期に撮ろうとしたのか、それを知りたいと思いました。
『君を想いバスに乗る』
90才の老人トム・ハーパーが、妻の遺骨を抱いて1300km、ブリテン島を縦断する長距離をバスで乗り継ぐ旅をする話です。
遺骨を思い出の地(娘の死)に散骨するためですが、あまり必然性を感じないので、いまいちの評価です。
映画はそのバスの旅で出会う人々、事件を描くロード―ムービーで、それなりの面白さはあります。
バスの故障を昔取った杵柄で修理することから始まりました。若い夫婦の親切、若者たちとの合唱、イスラムの女性を差別する英国人との対決など、多くのエピソードがありました。
そして超高齢の老人の一人旅はSNSで紹介されて、トムは英国中に知れわたり有名人になっていました、とさ。
『アイム・ユア・マン』
「恋人はアンドロイド」という副題を付けた、完璧なAIを搭載したアンドロイドは恋人になれるのか、という映画でした。
博物館の研究員の女性アルマが、研究費ほしさに企業の研究実験、アンドロイド(トム)の疑似恋愛を体験します。
アルマの気を引く理想の容姿と頭脳を搭載したトムを、アンドロイドと知りながら同棲しますが、徐々に人間性を感じるようになるという話でした。
アルマの失意や思い出など、人間が弱るところで優しくされるとグッとくるという、それも織り込み済みのAIです。しかもその容姿が魅力的、とくればそうなるでしょう。
老博士が若いアンドロイドの恋人を得て「人生の幸福を感じている」といいます。素直になれば、アルマも幸せになれる、という暗示が提示されました。
計算されない魅力をどこかに持っていても、それも計算のうちになるとすれば、あるいは心や魂などもあいまいなものとすれば、アンドロイドを否定する要素はありません。