「イタリアで障害者がはたらくための法制度」大木正俊姫路獨協大学準教授

 6月例会『人生、ここにあり!』の一つの側面に関わって、イタリアの障害者の就労に関する話をしていただきました。

 あまり聞けない話を系統的に聞けてとても良かったです。
障害者の雇用を確保しようという流れは二つあります。まず最初に始まったのは、貧困対策と同じ考え方で、施しとして企業に障害者の雇用を強制することです。「義務的雇用制度」といわれて、イタリアでは1968年に15%の雇用を義務つけました。これは当たり前のことですが守れませんでした。
 次の考え方は「障害」を持つことを理由に雇用に差別を禁じるという「差別禁止法制」です。米国から始まり、EUでは2000年に「指令」が出されています。これは障害者の人権に配慮する考え方で、イタリアでは1999年に現行法が制定されています。行政と雇用主が情報交換して障害者が働ける環境づくり、適性等を考えて、働く側も雇う側も満足いくような調整が行われ、障害者の雇用を促進しています。
 もう一つは社会的協同組合の話です。実際に障害者の雇用を作り出したのは、イタリアの伝統的な協同組合でした。社会福祉的な障害者雇用ではなく、市場性も加味し働き甲斐も追求する、そして税制等で社会的な支援も得られる、それが大きな力を発揮したようです。
 その典型例が、この映画になるのでしょうか。是非、ご覧ください。働くことが人間にとっていかに大切かということが描かれます。現代の日本のような、利益のみを評価するゆがんだ働き方と好対照です。
 終わってからいつものように懇親会です。

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