5月に見た映画

 5月はメーデーで休み連休もあって、数をこなしています。『少年と自転車』『アーティスト』『裏切りのサーカス』『HOME愛しの座敷わらし』『明りを灯す人』『幸せの教室』『ル・アーブルの靴磨き』です。
 すでにブログに書いたものを除いて、簡単に感想を書いていきます。
 『裏切りのサーカス』は英国諜報部の内情を描いた映画です。簡単に言えばスパイ組織にはどこまで国家や組織に対する忠誠心があるのかを辛辣に描きました。
 結論は最高幹部はみんな裏切っていた、ということです。より正確に言うとしたら、国家よりも自分が仕事で評価してもらう方が大事、そのために利用できるものは全て利用するということです。

 それでいうと主役のゲイリー・オールドマンが、ちょっと良心的な面を見せて真相を探っていきます。しかし最後のは全てに蓋をして最高幹部に返り咲くということで、その変態性をググット見せます。
 初めて見ると分かりにくいだろうと言う事で、登場人物の関係を描いた資料を入場の際に貰いました。でも良く考えると、わかりにくい主な要因は、常識的な人間関係を覆すようなことを、スパイ組織がやっているということです。嘘に嘘を重ね裏切りも日常茶飯事で、保身と出世だけ彼らの基準です。
 私は彼らの言う「常識」が通用する社会であっては困ると思っています。ですから日本でも政府の都合よく支配が出来る「共謀罪」や「秘密保全法」を認めることは出来ません。英国民がいとも簡単にイラク戦争に賛成したのは、スパイの活動を許し、国民の目から真実を隠すというその辺りに問題がありそうです。
 『幸せの教室』はそのような国家秘密とはまったく関係ないような、庶民のささやかな幸せを求める映画でありました。でも、と私は言いたくなります。

 主演のトム・ハンクスジュリア・ロバーツは典型的な米国A級市民を演じています。トムはウォルマートと思しきスーパーを首になり、大学卒という学歴がないために首になったことから、就活の一環として大学に通うことにします。その大学にいたのがジュリアの先生です。
 大学といっても学問をする場ではなく、社会にとって有益な教育を受けるという、専門学校のようなものです。大学とはそんな所と、この映画もトムも、それを当たり前として受け入れています。
 一方、ジュリアも学問を深めるのではなく、知識を切り売りするように学生に教えます。彼女は世間の常識から言えばダメ亭主を抱えて、もううんざりの家庭生活を抱えています。
 二人は教師と教え子を超えた関係になっていくのですが、それは決してメロドラマではありません。ごく単純な男女の恋です。
 米国は失業者も幸せをつかめることが出来るし、しがない大学の先生は、ものごとを深く考えずとも幸せになれる、という映画です。ですから二人はA級の米国市民だと私は思うのです。
 ついで『ル・アーブルの靴みがき』です。アキ・カオリスマキ監督です。まあそれだけで、並大抵の映画ではないと、わかっていただけると思います。早くも21世紀最高傑作という声も聞きました。



 確かに、上記の画像を見ていただくとわかるように、素晴らしい構図です。カオリスマキ監督の映像のワンショットワンショットは、それの積み重ねです。その美しさは、対象物(俳優や背景)の美しさではなくて、その構図、立ち位置とかポーズです。それだけでも見る価値はあります。
 でも映画はそれだけかといえば、私は違うという立場です。この映画は、不法移民を持ち込んで非常に奇妙に物語が展開し、靴みがきの親父が大活躍するという話です。
 面白いけれど、そんな話にして良いのか、と思います。
 『HOME 愛しの座敷わらし』は、私の憧れである安田成美が出てて、それだけで見ようと思ったのですが、ちょっと農村を軽く見ていないか、という「むっと来た」思いがあります。


 左遷されて、あえて田舎暮らしに浸りこんでいくのですが、それはとても良いのです。でも会社に再評価されて本社に戻っていくのはどうでしょうか。
 50代という、後わずかな会社人生をどのように過ごすのかという選択で、彼はもう一度、企画開発の仕事に戻ることを選びます。それほど魅力的な仕事であったということです。
 わたしは違う人生もあるだろうと思います。