『ブラック・ブレッド』『ドライブ』『青い塩』『屋根裏部屋のマリアたち』『苦役列車』『ベティ・ブルー』

 頑張って映画を見ていると、自分でほめたくなります。忙しいなと思いながら、それなのにこんなに見ています。これに例会もあります。
 で、良かった映画から順番に書いていきます。まずは『屋根裏部屋のマリアたち』です。


 60年代のパリ、証券会社のオーナー社長がスペインから出稼ぎに来たメイドに恋する話です。根っから親切な男で屋根裏部屋に住まうメイドたちをちょっと憐れんで、彼らのトイレの修理をしてやり、あるいは夫の暴力で困っている女には住処と仕事をあてがってやったりしているうちに、自分の家の美人メイドに惹かれてしまうのですが、この呼吸がフランス映画は良いですね。ブルジョワ階級の男が主人公ですが好きな映画です。
 それと対照的なのが『ドライブ』で、こちらは天才的なドライブテクニックを持つ男が、クールな顔をしながら隣の人妻を好意を抱き、その亭主の犯罪を手伝うことから、闇の世界と抗争するという、まことにアメリカ的な映画です。

 よくあるパターンですが、この人妻キャリー・マリガンが好きなのと、カーアクションが良いので二番目にしました。
 フランス男とアメリカ男と続いたので、韓国男の代表ソン・ガンホの『青い塩』を取り上げます。映画自体はハリウッド風でそれほど面白いと思いませんが、ソン・ガンホはいい役者ですね。何でもこなせて味のある人柄を出してしまう。

 この映画では組織から足を洗った元ヤクザですが、それらしい貫禄があり、若い女をひきつける軽さも出しています。でも話が、なぜ組織から出たのか、組織の内部関係とかが不明確で、しかも終わり方も二番煎じです。
 そういうことで言えば『ブラック・ブレッド』の方が、謎の作り方はすごいし、人間の弱さ嫌らしさを盛り込んでいます。

 スペイン内戦の直後で、敗れた左派は、官憲からも右派勢力からも、痛め続けられていくのですが、映画の舞台となる田舎の村では、昔からの人間関係もありかなり陰惨となります。
 左派=いい人とはいかない弱さと、同性愛に対する根強い偏見が明らかになります。もっと怖いのは、それを見つめて大人になっていく子どもがどうなるのか、ということです。
 『屋根裏・・・』でもスペイン内戦が出てきますが、第2次世界大戦の複雑さを教えてくれます。
 それで日本は『苦役列車』で北町貫多の森山未來ですが、風俗好きの助平、変態性の感じは出ていますが、最後の小説家にこだわる執念は原作者にかないません。

 女も自分と同じくセックスがしたと思っているという思い込みを行動原理にしている男はいますが、普通はそれを表に出すほど不器用ではないのでしょう。山下監督がこれを映画化したかった意図は、わたしにはよくわかりません。
 時代が80年代終わりというバブルですから、それなりの明るさがあります。もしこれが現代なら、もっと悲惨な雰囲気が必要です。
 セックスが主役なのは『ベティ・ブルー』です。冒頭からのまぐわうシーンでの男の腰の動きがすごい。

 狂気とセックスだけの映画ですこれが人気が有るのですかね。確かに男も女も美男美女でですが、日活ロマンポルノのような情のあるセックスではないです。