8月例会『海洋天堂』

 やさしい強い映画でした。悪人というかちょっとイヤな奴、と思うような人が出てこないし、誰もが息子、大福のことを気づかい、彼のために力を貸すことを惜しまない、まさに天国にいる人々のような映画でした。


 自閉症の息子とその父の話です。上の写真は、わずかに映し出される二人の恋心です。
 自分の余命がわずかだと知った父は、息子の未来に絶望して、一度心中を試みます。


 船べりで二人仲良く並んでいますが、このあと足に重石をつけて海に沈みます。しかし大福がロープを解いていたことから助かります。
 映画はそこから始まるのです。決して強い父ではなく、死にぞこなった父は、懸命に息子に生きる術を教えようとしますが、うまくいきません。
 結局多くの人に手助けしてもらいながら大福は生きていくのだろう、と終わります。
 自閉症というのがピンとこないと、わかりにくいのですが、障がいをもって自立して生きていけないだろうと思う子供を残して死ぬ親の気持ちが、よく伝わってきます。
 中国映画ですが、国や社会が面倒見てくれと直接言ってはいません。助け合うような社会がほしい、というように見えました。
 ですから、それは日本でも同じことで、一人ひとりがそう思い、しかもそれを実行できる生活が社会全体としてある、という風にならないかな。