『はい、奥田製作所』神戸演劇鑑賞会

10月15日に標記の芝居を見ました。ここでは芝居の感想を書きます。
この週はとても忙しい週(芝居、仕事、市民映画劇場、自治研究集会、マサイの戦士)で、それぞれの出来事、全てをこのブログに書く値打ちがありますが、そうもいかないので、書ける範囲のことだけを書きます。もっと突っ込んだ話は、私の個人的なメールだけで話をします。
『はい、奥田製作所』は中小零細企業の実態を描く演劇です。本当にいい芝居で感動的でした。しかし、最後に良かった良かったで終わるのは、どうかなと思いました。


現実はもっと厳しいというのは、多くの皆さんが知っているのだから、リアルに描いてほしい、という気持ちと、映画や芝居の中だけでも希望を描いてほしいという、二律背反のような気持ちがあります。
私は現実的な希望はあるという考え方です。現実をつぶさに見て、押し開くべきところを見つけるべきだと思います。
現実を厳しい、とだけしか見ないと悲観的な見方しか出来なくなると思います。そこで小さな希望の萌芽を見つける、あるいは主人公たちは気付かないが、身の回りとはべつに、歴史的な大きなうねり、地球上の各地で闘いが生じている、というのが、私の好きな終わり方です。
簡単にストーリ紹介しておくと、町工場の奥田製作所は金属加工の職人芸を持つ社長が倒れて、経営が立ち行かなくなっています。その息子が工場を背負って、経営を効率化させて頑張ろうとしますが、うまくいきません。
町工場の原点である「人を大切にする、周囲の工場と協力共存で行く」事を忘れてはだめだと、という展開です。そのことに気付くと、全てうまく回るというのが甘いという点です。
芝居の後に、劇団と交流会がもたれました。

私は鈴木瑞穂さんしか知りませんが、みんな気持ちのいい演技でした。とくに後を継ぐ息子の役者は、役が儲けものですが、とても好演であったと思います。
後日、コミュニティの食事会で
芝居全体が甘いという意見が、けっこうありました。そして私がそんな描き方を意外に許している、と言われました。もっと批判するのか、と思ったそうです。
信じてはもらえませんが、私は元々人情派です。甘いロマンティスト、性善主義者です。ただ、その前提になる私たちを取り巻く情勢はきちんと見よう、その本質に迫ろうという思いで、芝居や映画を見ます。
私が批判するのは、その辺りをいい加減に描いたり、本質を見誤ったり(と私が思う)しているところです。正しい(と私が思う)状況の中で、登場人物たちがどんなにお人よしであっても良いと思います。
裏切られても裏切られても人を信じる人や、昔、酷い目に合わされた人を、簡単に許す人がいても、それは良いのです。