第58回自治体学校in神戸

7月30日から8月1日まで、自治体学校に参加しました。
この10年ぐらいは、連続して参加しています。最初は30歳ぐらいだと思いますが、通算で20回を超える程度は行っています。
最初は「学習」と言う気持ちでしたが、最近は「気晴らしと刺激を求めて」に変わっています。
今回は第1回の自治体学校が有馬で開催されて、それ以来の神戸開催です。

最初、太鼓集団輪田鼓と中華同文学校の中国獅子舞がありました。神戸らしくてよかったですね。それから自治体問題研究所の前理事長、加茂利男先生の記念講演「日本型人口減少社会と『地域の再生』−不安と混迷の時代をどう生きるか」でした。

それから沖縄の状況について4人の方からパネルディスカッションの形で報告がありました。
翌日は分科会で「東日本大震災5年ー復興と減災の課題」に参加しました。
8月1日は「自然災害からの復興と地域連携」という西堀喜久夫さんの特別講演でした。
分科会で、私も下記の文章で報告しました。ちょっと長いですが載せます。
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神戸における密集市街地のまちづくり
1. 震災復興事業以降のまちづくり
阪神淡路大震災の震災復興事業のめどが立った時期から、神戸の都市計画事業は大きく変化した。
膨張する都市に対応する公共事業は、人口の停滞・減少と財政危機、都市基盤の充足を理由として、ほぼ停止した。震災復興事業の収束に歩調を合わせるようにして、神戸空港、地下鉄海岸線、西神地域の団地開発なども収束した。
「山、海へ行く」の象徴でもあった西神地域から須磨の海岸に土砂を運んでいたベルトコンベアも2006年にその役割を終えた。
震災後、大幅な行財政改革が繰り返されて、外郭団体も含めた全市的な組織、人員、予算の削減が行われた。建設部局の組織体制も縮小され、公共施設の新規整備よりも管理、改善、補修に重点が置かれた。
都市計画事業、まちづくりを担当する労働組合員でつくる都市計画支部は、震災後に最大約600人になったが現在約200人に減った。
2011年3月に基本方針の『都市計画マスタープラン』や都市計画道路の廃止も含めた『都市計画道路整備方針』そして『密集市街地再生方針』が作成された。
現在は、三宮周辺の都心再整備が注目を集めている。
2. 密集市街地の再生
(1)整備の方針
公共施設が不足し木造老朽家屋が密集している地域(密集市街地)は、東京や大阪、京都等、大都市でもまだ多く残り、神戸市でも約400haといわれている。
神戸のまちづくり、都市計画は戦災や震災を免れてきた密集市街地の防災性の向上を、今後の重要な課題として認識した。
『密集市街地再生方針』では、建物自体の燃えやすさ「延焼危険性」と道路等が狭いことによる「避難・消火の困難性」を指標として、それらが連担する4地域(灘西部、兵庫北部、長田南部、東垂水)を密集市街地再生優先地区として定めた。
この地域で、まちづくり協議会、コンサルタント、行政が協力して、取り組みを進めている。
施策の基本的な考え方は「『燃え広がりにくいまちづくり』や『建物が倒壊せず、避難が可能なまちづくり』をめざして、防災面の課題の大きさに応じて多様な施策を組み合わせることにより、相乗効果による密集市街地の再生をはかります」としたが「具体的な施策や事業を、協働と参画により作り上げていきます」と曖昧にしている。
面的な整備手法を、これまでの区画整理や再開発の法定事業から任意事業である住宅市街地総合整備事業に軸足を移した。整備目標は決めるが、強制的な買収や建物移転を伴う道路整備等については整備計画に定めず、整備水準も低下した。
これらの地域は①公共施設が少なく、身近な生活道路さえも不足している、②地形的に地域改善費用が高い、③地域の経済力やまとまりが弱い、等の課題があり、本来的には行政主導の事業が求められる。しかし多くの大都市も同様だが、財政的な負担が大きいために密集市街地を改善する法定事業を避ける傾向になっている。
(2)整備手法
区画道路等の計画的な公共施設整備は難しいため、これまでの「公共施設を整備する」事業という枠をはずし、「私有財産の部分的な改善」事業を検討してきた。柔軟に「現状よりも改善すること」を整備、改善の指標にして、住民や地権者の合意の上に地域特性を生かした「修復型のまちづくり」の魅力を出す、という手法に切り替えた。
密集事業の要綱には①建替促進事業、②老朽家屋除却事業、③不燃化、耐震化促進事業、④身近な環境改善、⑤その他市長が必要と認める事業、を掲げている。
具体的には、①建替えを促進する「細街路整備事業」(私道など道路中心線を確定することで道路整備費助成)、②建詰まり解消、空間確保の「まちなか防災空地」(家屋除却費を助成、跡地を市が無償で借り上げ整備、固定資産税を免除、自治会等が管理活用)、③2方向避難を確保する「緊急避難サポート事業」(緊急時の避難路確保のために、私有地等に階段、扉等を設置)、④燃えにくい建物に建替え助成の「不燃化促進事業」などを行っている。
密集市街地再生事業の肝は「住民主体」のまちづくりによって、安全安心の水準を引き上げることにあわせて、地域コミュニティを作ることである。地域特性に沿った課題と改善方法を検討し、新たな助成制度もふくめて事業を進めている。
大規模な改善は難しいが、部分的な改善にとどまるのではなく、住環境の改善の影響範囲が広い生活道路の整備など、いっそう高いレベルの地域合意が求められる。
そのために、まちづくり協議会の活動量、コンサルタントの企画調整能力、行政内部の調整力等の強化が求められる。
法定事業に比べて事業実施の権限が乏しく、実現には時間を要する、困難な事業だ。
3. 今後の課題
 神戸市は1981年度に「まちづくり条例」を作り、まちづくりに対する住民の権利を明記した。それ以前から丸山地区や真野地区といった全国的に有名になった住民団体の自主的な活動があり、板宿地区では住民の土地区画整理事業反対運動に対して、まちづくり協議会を設置して行政と住民が話し合って事業を進める方式を確立していた。
 震災復興事業を経て、住民と行政に加えて、まちづくりの専門家(コンサルタント)の重要性が高まった。この3者が協働することで神戸のまちづくりは「住民参加」から「住民主体」へと形作られた。
神戸市では「まちづくり条例」に基づき地域の課題がある限りまちづくり活動を助成しコンサルタントの派遣を行っている。期限を切っていない。そのことで、まちづくり活動が継続されている。
密集市街地に限らず、全市域でもまちづくり活動が求められている。人が変わり時代が変わることで街も変わる。「住みよい魅力的な街」の基準も変る。変わらないのは、住み続ける人たちが主人公であることだ。
そんなまちづくりのために、地域もコンサルタントも行政も、継続した人づくりが重要になっている。阪神淡路大震災の経験からも、防災・減災のためには自治体の政策として、人づくり地域づくりが重要だ。そのために以下のような課題を考える。
① まちづくり活動への継続的な助成をおこなう。
② まちづくり協議会や自治会等、地域活動に住民が参加しやすい社会を醸成する。
③ 住民等の合意をもとにまちづくりの規制と誘導、公共施設の整備、改善を行う。
④ 多様なまちづくりの専門家の育成を行う。
⑤ 住民、専門家、自治体職員等を育成する継続的な研修、研究会を実施する。
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兵庫の地酒交流会でいい酒をたくさん飲みました。


龍力、小鼓、雪彦山剣菱、他に明石、丹波純米酒がありました。懐かしい友人も会えたし、まあまあの学校でした。