高畑勲さんを悼む

高畑勲さんを悼む文章を映画サークルの機関誌に投稿しました。ここにもそれを載せておきます。

大きな影響を受けました。
四月五日、高畑勲さんがお亡くなりになりました。心よりご冥福をお祈りし、哀悼の意を表します。本当に残念な思いです。
高畑さんが世界のアニメーション界に残された足跡の大きさは、私などでは推し量ることもできないものです。その真価については、専門誌などでしかるべき人が書かれるでしょう。私は個人的な思いを書きます。
太陽の王子ホルスの大冒険
 子どもの頃『オオカミ少年ケン』というテレビアニメが好きでした。一九九〇年市民映画劇場で「ホルス」を見たときに、似ているという印象を持ちました。このアニメの演出に高畑さんも加わっています。
 孤独なホルスがいて、勇敢なホルスが悪魔と闘い、裏切りの海の中で絶望感にとらわれるホルスの苦しみが描かれます。そして仲間の信頼を取り戻してホルスは再生します。
 私もまだ若い年代で、迷っている時期です。どこに自分の居場所を求めるのか、果たすべき役割は何かなどを考えました。
『柳川掘割物語』
 二〇一〇年『キリクと魔女』を上映した時に講演をお願いしました。1時間ほど待ち時間があり、いろいろな話をさせていただきました。この映画は「まちづくりにかかわる自治体労働者のバイブルです」といったことを覚えています。
柳川市職員、広松伝さんが自治会長や住民の皆さんを信じて故郷を守ろうとする姿を通じて、自治体労働者としての役割、知識の研鑽と勇気、行動力を描きました。
この映画は、私のその後の人生に大きな影響を与えた、生涯のベストスリーの1本です。
映画人九条の会
 社会的政治的な問題に対して、旗幟を鮮明にした言動を取ってこられました。憲法九条改悪の動きに対してきっぱりと反対し、身をさらしてでも安倍政権と対立する姿勢を示されています。国政選挙では日本共産党支持を表明されました。
 映画作家は、よい映画を作っていればよい、という考え方ではありません。人間の複雑さをまるごと描く作品とは異なり、社会に対してはストレイトに発言し行動することを厭わない人でした。
未来に対して責任を負う生き方だと思います。年賀状に次ぎの様なことを書かれていたと聞きます。
公平で、自由で、仲良く/平穏な生活ができる国/海外の戦争に介入せず/国のどこにも原発と外国の部隊がいない/賢明強靭な外交で平和を維持する国/サウイフ国デ ワタシハ死ニタイ
その思い、受け継ぎます。