「フランスの教育と社会」白鳥義彦(神戸大学大学院人文学研究科)

 11月例会『12か月の未来図』の学習会を神戸大学教授の白鳥さんから標記の題名でお話を伺いました。以下に私の記憶に残った簡単な内容を書きます。

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 フランスの教育制度は、平等主義とエリート主義の両面を持つのが特徴です。フランス革命の大原則は自由、平等、博愛ですが、それが時代によっていろいろと変わって行っても、原則を守ろうとする社会的な力が働く国なのだと、お話を聞いた印象です。

 義務教育は16歳までですが、教育費を原則無料にして誰もが学べます。その一方で進級は結構厳しく、留年、飛び級や退学もあります。この映画でも「この程度でそこまでやるか」と思えるような退学処分が出てきます。

 バカロレアという高校卒業資格試験制度、これを基準に学年名が呼ばれます。日本で中1年生は第6級、高3年生は最終級という具合です。

 これに通れば誰でもが大学に入学できる制度です。大学も入ることは簡単、定員が無いので最初、教室は一杯だが、だんだん減ってくるそうです。しかし入学できても進級、卒業はきちんと勉強しないとできません。そこは日本と違います。大学の授業料は無料です。

 バカロレアは記述式の試験で、哲学の問題では「時間から逃れることは可能か?」「芸術作品を解釈することは何になるのか?」「労働は人々を分断するのか?」が出るそうです。

 何か難しそうですが、試験ですから答えるコツというものがあるそうです。どう言うのかな、ちょっと教えてほしい気がします。

 高等教育としては、大学と並行して行政学院や政治学院、師範学校などエリートの専門家を養成する学校、グランド・ゼコールがあります。歴代大統領の学歴はここの出身が多く、現在のマクロン大統領はパリ第10大学とパリ政治学院を出ています。

 

 移民難民の受け入れ国で、主に郊外に低所得者層が多く、フランスでも階層の分離があり、その固定化に危機感がもたれています。「恵まれない出自」が多い中学校には先生の数を増やす等の配慮もあるそうです。

 しかし映画のように経験の浅い若い先生の配置も多いようです。

 『12か月の未来図』は今週11月21日(木)22日(金)の上映です。