2022年9月に読んだ本

えらい人ほどすぐ逃げる/竹田砂鉄』『芸人魂/マルセ太郎』『矜持 警察小説傑作選/西上心太編』『世界9月号』『前衛9月号』

 とりあえず2冊を書きました。

『えらい人ほどすぐ逃げる/竹田砂鉄』

 雑誌「文學界」に掲載したエッセイ「時事殺し」を集めたものですが、大幅に加筆・改稿しているそうです。選ぶテーマもいいし権力批判がストレートです。何が一番えらいかと言えば、実名を挙げて批判することです。これはすごいと思います。

 章の見出し、副題を紹介します。

 ①偉い人が逃げる-忘れてもらうための政治②人間が潰される-やったもん勝ち社会③五輪を止める-優先され続けた祭典④劣化する言葉-「分断」に逃げる前に⑤メディアの無責任-まだ偉いと思っている

 これだけ見てもなかなかのものです。

 しかも章ごとにまとめの文章も書いてあります。丁寧にわかりやすく主張します。

 現代日本の権力、支配的風潮に対し、おかしいことはおかしいと、言うべきことを言うスタンスです。

 ちょっと追いかけようと思います。

『芸人魂/マルセ太郎

 マルセ太郎自身が書いた自伝的エッセイです。

 マルセ太郎と言えば「スクリーンのない映画館」ですが、その前史が書かれています。面白い芸人だと思っていましたが、売れた芸はこれだけだったのです。

 50年ほど前に深夜テレビ「11PM」でテレビに出ない芸人として出て、サルの芸をしていたのを覚えています。帽子の芸人の早野凡平コブラの東京コミックショーがいました。

 色川武大永六輔等に認められて、少しずつ売れるようになったようです。でもその売れない時代に巡り合った知人、友達は変人奇人の部類です。でも良い人たちが多くいました。それに比べて、マルセ自身が書いていますが、彼は売れる芸人になりたい意識が強い「卑しい芸人」だった時代があるようです。

 第1章「お客さん」第2章「演芸場の人々」第3章「お姐さんたち」第4章「わが友、わが先輩」第5章「人生の出会い」第6章「家族主義」

 彼の父が朝鮮半島から来た在日2世ということでの苦労もあるでしょうが、懸命に芸人にしがみついたがための、波乱万丈の人生のように思いました。そこでここに書かれてあるように人々に知り合えたのですから、苦労はあってもそれはすばらしき、うらやましい人生です。

 漫才ブーム、トリオブームに乗れなかったのは、芸の才能かもしれません。「スクリーンのない映画館」もパントマイムというよりも、私は、その映画の評論的要素が強いように思いました。