2022年8月に見た映画

『キャロル』『ルッツ』『Ⅼ・A・コールドケース』『ファイナルアカウント 第三帝国最後の証言』『長崎の郵便配達』『アプローズ・アプローズ囚人たちの大舞台』『地の群れ』『島守の塔』『ブルー・バイユー』『クレッションド音楽の架け橋』『クーリエ:最高機密の運び屋』11本でした。

 面白い映画、例会にしたい映画もあります。ヒットしているけれでも、きちんと批判しないといけないのもありました。

 23回に分けて書くところですが、でも22年分は早く簡単にすまします。

『キャロル』

 女性の同性愛を描きました。製作は2015年ですが、舞台は1950年代のニューヨークです。

 デパートで働いている若い娘テレーズは、子どものクリスマスプレゼントを買いに来た美しい人妻キャロルに、一目で惹かれます。

 テレーズにはボーイフレンドがいたのですが、女性に惹かれる自分を自覚します。キャロルは、すでに同性愛者であることを自覚しています。そして二人は恋愛関係に陥っていきますが、この時代ではそれは社会的に許されません。

 夫と離婚裁判中のキャロルはテレーズ関係を知られて、親権を奪われます。

 そのことで二人は別れますが、再び出会って・・・・。で映画は終わりました。

 過激なセックスシーンはなく、恋をする気持ちが、言葉ではなく視線の動きや仕草など、映像で描かれました。 

『ルッツ』

 マルタの漁師の映画です。ルッツは彼らが操る、伝統的な小さな漁船の名称です。マルタは地中海、シチリア島の南にある小さな島国です。国土面積316㎢、人口44万人です。

 一人で沿岸漁業で生活を営んでいますが、暮らしが成り立たないようです。しかも船も痛みがひどくて修理が必要でした。金が必要ですが、手に入れる術もありません。

 そんな漁師の現実をドキュメンタリータッチで描きました。その原因ははっきりとは描きませんが、日本の第一次産業の衰退である、大型化、機械化等によって、個人営業は成り立って行かない流れと似ていると思いました。

 しかもマルタ政府は、ルッツの廃棄に「転業助成金」なるものを支払う制度をつくっていました。

 主演の役者は、実際の漁師を使っているそうです。

『Ⅼ・A・コールドケース

 実話にもとづくものですが、ちょっとわかりにくい映画でした。

 19961997年と立て続いて、ヒップホップ界のニューヨークとロサンゼルスの大物ラッパー二人が殺害されて、しかも犯人が捕まらなかった事件を、それを担当した刑事が18年も追い続けたという話です。

 あまり上手な描き方でないので、事件全体が呑み込めませんでした。

『ファイナルアカウント 第三帝国最後の証言』

 ナチスドイツやその青年団組織であるヒトラーユーゲントにいた人たちの、戦後の生き方を問う映画です。インタビューを主としたドキュメンタリーです。

 ドイツは戦前の過ちを反省した国ですが、個別の人々は違います。それでいいと、私は思うのです。

 でも彼らはほとんどは、深く悔いたり、反省、自己嫌悪に陥ったりしていません。ひどい人間だと思うのです。

『長崎の郵便配達』

 これもドキュメンタリーです。

 長崎で原爆を受け、反核平和運動を貫いた谷口稜曄 (すみてる)さんと、元英国軍人で後にジャーナリストなったピーター・タウンゼントさんの交流を、彼の娘イザベル・タウンゼントさんが追いかけていく映画でした。

 私はこの映画の良さがわかりません。

『アプローズ、アプローズ!囚人たちの大舞台』

 実話に基づきます。

 囚人たちが矯正プログラムとして芝居をして、それを一般公開すると大人気になるという話です。実話とは国を変えてフランスを舞台にしています。

 囚人達が演じるのは「ゴドーを待ちながら」です。不条理劇ですから、この芝居の本当の良さは私はわかりません。

 ですが、この映画のように囚人がこの芝居をするのは何となく面白そうです。映画は演じる囚人たちの個性を際立たせながら「ゴドーを待ちながら」の雰囲気を出していました。

『地の群れ』

 これは1970年の古い邦画です。友人がDVDを買ったので、演劇鑑賞会の事務所で見ました。原作井上光晴、監督熊井啓でした。

 原爆被害者や部落問題などを描いていました。

『島守の塔』

 戦前の最後の沖縄県知事である島田叡を主人公にした映画です。

 長めの感想を書き、ブログ(2022108日)に載せましたので、それを読んでください。さらに2023年発行予定の「映画批評」にも突っ込んで書きます。

 あの時代で政府側にいた人物は、それほど持ち上げるほどではない、というのが本音です。しかも彼は内務省の警察関連の人間です。特高警察ともなじんでいたと思います。

『ブルー・バイユー』

 バイユーは、米国南部の低湿地、沼、小川を意味します。映画の舞台となるニューオリンズで暮らす、韓国で生まれて米国人夫婦の養子となった男、彼の遊び場でした。

 彼は米国市民と思っていましたが、ちょっとした犯罪を犯して、養子の書類に不備があって韓国へ送還処分となります。それを防ごうと裁判に訴えて闘う映画でした。

 人種差別や貧富の格差等を内在する映画でした。 

『クレッションド音楽の架け橋』

 とてもいい映画で、好きです。

 パレスチナイスラエルの若いバイオリン演奏者たちを集めて一緒にコンサートをする企画がすすめられます。彼らを指導するのはナチスドイツの戦犯を親に持つドイツの音楽家です。

 途中で挫折するのですが、彼らの変化がとてもうれしい映画です。

 神戸で何度か上映されていますが、市民映画で取り上げたい映画です。

『クーリエ:最高機密の運び屋』

 8月例会です。

 1962年のキューバ危機の前、ソ連の重要機密がそれの要人から英国のビジネスマンを通じて、米英に流されていたという「スパイ」事件に基づく映画です。

 007のような職業的スパイとは違う、人間の良心、地球の破滅を救いたいと思う男たちの話でした。