2020年9月に見た映画

2020年9月に見た映画

シチリアーノ 裏切りの美学』『リトル・ジョー』『無垢なる証人』わずか3本だけしか見ることができませんでした。連休があったのにこうなったのは、それ相当の理由はあります。

 月末は旅行に行きました。その他の週末は稲刈り、映画学校、高畑勲展、喜楽館、友人との飲み会等で見事に埋まりました。10月はちょっと力を入れてみようと思います。

 見た映画は、それぞれに特徴がありました。

シチリアーノ 裏切りの美学』

 1980年代、実際にあったマフィア幹部の内部告発を映画化したものです。

マフィアの幹部であったブシェッタは、手打ち式の後、組織間の争いを避けてブラジルに住んでいましたが、内部抗争f:id:denden_560316:20201007011446j:plainで友人に裏切られ家族を殺されます。逮捕されてイタリアに送還された時に、マフィア撲滅に全力を挙げる判事の熱意にこたえて、組織内部の告発に踏み切ります。

映画の前半は凄惨な殺しの場面が出てきますが、後半は裁判の場面になります。

巨大な法廷で、逮捕されて檻に入れられているマフィア幹部と大勢の傍聴人に囲まれて、ブシェッタは証言します。「裏切り者」という罵声が飛び交う中で、時には相手と事の真実をかけて対決するシーンもあります。

裁判での対決はテレビのショーを見ているようですが、実際にそんなことをしたのだろうと思います。

マフィア撲滅の先頭に判事が立つというのも奇妙ですが、イタリアの司法制度はわかりません。後にこの判事は殺されます。

裁判の後は、証人保護プログラムに基づいてアメリカに移住しますが、執拗に付きまとう影があるように描きます。ブシェッタ自身も安心できずに銃を持って眠られる日を過ごします。

この映画はブシェッタに焦点を当て、「誇り高き男」を自認し、昔の仲間から「裏切り者」呼ばわりされても動じない彼の心情に寄り添いました。

マフィアの跋扈ばかりが強調される映画で、元大統領も絡んできます。イタリアはそんな国なのか、と他のイタリア映画とちょっとイメージが違ってきます。

『リトル・ジョー』

 面白いSF映画でした。

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バイオ企業の研究者アリスは、人工交配で生み出した植物「リトル・ジョー」人間の心を癒し、幸せな気分にしてくれる色と香りを持った花、それを育てようとしています。

花粉なのか、化学物質なのかははっきりしませんが、リトル・ジョーは人間に何らかの影響をあたえる能力を持っていると、何人かが感じ始めます。この花にかかわった人間に次々と異変が生じたのです。

しかし、その異変はリトル・ジョーのせいなのかははっきりしません。昔、心の病気を患ったベラが不安定になり、家に持ち帰っていたリトル・ジョーの世話をしていたアリスの息子ジョーが母親との距離を置き始めます。

この植物は不稔性としてつくられることが一つの鍵です。それは種子を作り出すことが出来ない植物です。自分の遺伝子を残すことができないためにリトル・ジョーは自分を守る力が異常に強い、という解釈が出来ます。

アリスが、リトル・ジョーが人間に良くない影響を与えているのではないか、と思い始めた時に、リトル・ジョーの花粉を吸いこんで、一転してリトル・ジョーが与える「幸せ」のとりこになります。それがラスト・シーンです。

リトル・ジョーに、最後まで好感を持たなかったベラは階段から転落し重体になりますが、その他の人々は、リトル・ジョーを愛し「幸せ」な気分を味わうのです。

見方を変えれば、人間性の少しの変化はあるにせよ、生活や人間関係に特段の変化もなく、美しい花を愛で、世話を焼く人々でしかありません。

上手な締めくくりでした。人間の「幸せ」はこのようなものだと言えます。そう感じられたら「幸せ」な毎日を送ることが出来るのです。

『無垢なる証人』

 市民映画劇場9月例会です。上映の後で、数人の会員から「とてもよかった」という声が出ました。私は未見でしたが「私もそういう評価ができるのか」と内心、心配しながら見ました。

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 で、どうだったかといえば、私としては物足りない映画でした。それはミステリー、法廷物の映画として検察や弁護士の描き方等で、見過


ごせない部分があったからです。

 老人とお手伝いさんだけが住む家で、その老人が自殺とも殺人とも判然としない形で死にます。道路を挟んだ向かい家にいた少女が目撃し、彼女の証言によって検察はお手伝いさんを起訴します。有罪にする決め手の物証がなく、アスペルガー症候群の彼女の証言だけが頼りの事件です。

せめて状況証拠と動機は検察がつくるものだと思いますが、それが弱すぎます。だから1審は無罪になりました。

 その一方で、多くの人が感動したようなところもわかります。一つは少女の描き方のやさしさ、もう一つは主人公の弁護士の揺れです。

彼は人権派の弁護士でしたが、父親の借金返済のために、意に添わぬ大企業の顧問弁護士事務所に転身していたのです。それが真実を求めて、事務所を切捨てて元の道に戻ってきた、という点です。

借金をつくった父親も善人ですし、正しい道、いい人間に戻った男を見るのも気持ちがいいものです。

さらに言えば、その戻り方が、アスペルガーの少女の能力を生かして、被告の弁護士が真犯人である被告の有罪を証明するという逆転劇が映画的には面白かったかな、と思います。

    私がご都合主義だなと思うのは実行犯のお手伝いさんの動機が起訴前はわからず、あとで彼女には病気の隠し子がいてお金が必要で、老人の息子に頼まれて殺人したということです。さらに大企業の顧問弁護士事務所が貧乏なお手伝いさんの弁護を引き受けるのも不自然です。

 でもそんな甘い点も含めて、感動を呼んだ映画でした。

 

西神ニュータウン9条の会HP10月号

表記のHPがアップされていますのでお知らせします。

http://www.ne.jp/asahi/seishin/9jyonokai/

今月号も充実していて、12本のエッセイが掲載されています。

平和問題、政治的な課題から、芝居の話、コロナ禍での生活等、本当に幅広い話題がいっぱいです。英国からも投稿されています。是非お読みください。

私も「憲法と映画」の連載を続けています。今月は『コリーニ事件』を書きました。

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フランコ・ネロ

法律の欠陥を小説で指摘して、現実の政治を動かすのですからドイツ人はすごいな、と思いました。

志摩、鳥羽、熊野の旅=9月24‐26日

 

三重県の南の辺りを旅行しました。ゴーツーキャンペーンを利用しましたから格安です。

 志摩半島には独身の時に行き、賢島、鳥羽には係の旅行で行きましたから、20代の時に2度です。少なくとも35年ぶりぐらいに、かの地を訪れたことになります。

 でも記憶にあった鳥羽駅前の古い町並みは、面影もなくさびれていました。密かに秘宝館が残っていれば行こうと思っていましたが、ありませんし、どこにあったかもわかりませんでした。街中には広い駐車場がありました。

初日は賢島、二日目は熊野へ

 24日、三宮から阪神、そして近鉄の特急に乗り継いで賢島まで行きました。木曜日とあって観光客はほとんどいません。

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近鉄賢島駅

 志摩マリンランドに行きました。ここと鳥羽水族館に行くのが、今回の旅の目的です。私は動物園、水族園、植物園が好きなのです。

 ここにはマンボウがいます。回遊水槽があって、古代の海をイメージした古代館がありました。古代の魚がいるわけでもないのですが解説とイラストでもいいのです。

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志摩マリンランド

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カンブリア紀のイラスト

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海女の餌付け

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賢島大橋

 この日は志摩の「心湯ねぼ~や」に泊まりました。おいしい料理を食べました。

 翌日はレンタカーを借りて、熊野、尾鷲まで足を延ばしました。しかし9時過ぎから午前中まではものすごい雨でした。高速道路を運転していて、先が見えないくらいの豪雨でした。

 10時ぐらいに、志摩半島が一望できる横山展望台に行きましたが、この時すでに小雨が降っていましたから景色はもう一つです。

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 雨の中を走り続けて熊野についたのは1時過ぎでした。熊野歴史民俗資料館に入りました。ここはきちんとした案内もない小さな資料館ですが、熱心な学芸員さんがいて、熊野の詳しい歴史を教えてもらいました。

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 この狭い辺りに40ものお城があったのは驚きです。林業、漁場、鉱山などがあったからでしょうか。それと徳川家御三家紀州藩の領地が三重の松坂あたりまであったことも初めて知りました。

 そしてここにも徐福伝説がありました。

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 でも熊野市は歴史資料館にあまり予算を付けていないようです。敷地も建物も狭くて古いし、きちんとした解説を書いたパネルやパンフレットなどもありません。

 勉強している学芸員がいるうちに熊野の歴史をきちんとまとめてほしいと思いました。

 この日は鳥羽の9つある温泉郷の一つ石鏡(いじか)のいじか荘に泊まりました。ここでもおいしい食事でした。

海の博物館と鳥羽水族園

 ホテルの車で、近くにあった海の博物館に送ってもら、帰りも鳥羽駅まで送ってもらいました。とても助かりました。

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建物の外形

 市街地からかなり離れたところにあり行くのに不便です。でも十分な敷地に建物が5、6戸あり、海と共に生きる人間の生活が展示されていました。

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古い船

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矢田勝美展

 鳥羽水族館はちょっと期待外れでした。記憶ではもっと敷地の大きな水族館でしたが、一つの建物に収まっていました。それ以上に中身がもう一つと思ったのです。

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 たくさんの種類と数がいて、きれいな施設ですが、魚が詰め込まれている、という印象です。比較的大きな水槽にはいろいろな種類の魚が一緒にいました。自然界ではこんなことはないでしょう。

 そして何よりも解説が貧弱でした。多くの人はあまり読まないかもしれませんが、私は魚の生態が知りたいのです。

 マリンランドと同じような「古代の海」というコーナーがありましたが、古代の説明がありません。古代から生き続けている魚がいるだけです。マリンランドのほうがいいです。

 アシカショーも面白いしセイウチも迫力がありました。日本の川の企画もいいと思います。ですが、説明がありません。

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 ジュゴンが人気でそこだけ別のコーナーがつくられています。余計なことですが、私は沖縄の辺野古米軍新基地反対ですが、そこはジュゴンの大切な生息地で、絶滅の危機ならば、そのことに物申せと思うのです。

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豪華な食事

 今回は海の幸を満喫しました。特別料理を頼まず基本のものでしたが、よかったです。朝食にも結構いいものが出てきました。

 ねぼ~やの夕食と朝食

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 いじか荘の夕食と朝食

 伊勢海老の刺身と焼き、アワビの刺身と蒸が出てきました。

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ホテルの眼下に伊勢湾の入り口が見えます。向こう側の島影は渥美半島伊良湖岬です。

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真ん中に見えます

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岡山県立美術館、高畑勲展

2020年9月22日、岡山に表記の展覧会に行ってきました。

アニメーション作家、高畑勲さんの作品を展示していました。

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岡山県立美術館

高畑さんは三重県で生まれ岡山県で育ちました。それで3回忌を記念して展覧会をしてくれたのです。コロナ禍ですから予約しての入場です。入る人を制限していますからゆっくる見ることが出来ました。それに地下の駐車場(無料)に車を入れられました。

約2時間見ました。

太陽の王子ホルスの大冒険』から『かぐや姫』までの原画や絵コンテなどたくさんありました。ですから見るのに時間が必要です。


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好きな映画を並べました。

展覧会は撮影禁止でしたが、唯一、『アルプスの少女ハイジ』の舞台のジオラマだけが撮影できました。

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雄大で複層的なセットです。

この展覧会で不満なのは、高畑勲の評価、評論が不足しているということです。会場にあったパンフレットの紹介もあまりにありきたりでした。

それに宮崎駿鈴木敏夫といった生涯の盟友からのメッセージは欲しいと思います。

高畑さんが亡くなった時にこのブログに弔文を載せました。2018年5月21日ですからご覧ください。

ついでに美術館の隣に岡本太郎さんの壁画がありました。

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山陽放送社屋の壁画

 

9月例会学習会「解放以降の韓国と現代の韓国」

市民映画劇場の2020年9月例会『無垢なる証人』の学習会を行いました。

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 9月4日、表記のタイトルで金泰賢(神戸コリア教育文化センター運営委員)さんに来ていただきお話を聞きました。以下のその要旨を載せます。

※  ※  ※  ※

 金さんは韓国の馬山で生まれ育ち、大学を卒業してから日本の大学院で学ばれ、そのまま就職し結婚もされました。現在は神戸市内の大学等で教えておられます。 

 学習会のテーマは、第2次世界大戦後の大韓民国の政治や社会の変化です。日本が戦争に負けて朝鮮が植民地解放されますが、朝鮮半島は南北に米国と旧ソ連に分割占領されます。その後、朝鮮戦争があり1953年の休戦協定時の38度線あたりの軍事境界線板門店で、朝鮮半島大韓民国朝鮮人民民主主義国に分断、固定されます。同じ民族で国家体制の全く違う分断国家として、それぞれの道を歩んでいます。

 記憶とメモを頼りに、学習会の要旨を、それぞれの大統領の時代に沿って紹介します。

 

 これまでも韓国映画は何本も見て、現代史は知っているつもりでしたが、歴代大統領の特徴などを改めて聞くと、韓国の人々の民主化を求めた闘いのすごさに敬意の気持ちを持ちました。

 李承晩、朴正熙全斗煥盧泰愚、金泳三、金大中、廬武鉉、李明博朴槿恵そして文在寅が私の知っている韓国大統領ですが、このうち、進歩派民主派といわれるのは金大中、廬武鉉、文在寅の3人、戦後75年のうちの13年だけです。

 1948年、李承晩は米国の軍政下に大統領として選出されて、北朝鮮に対抗する反共独裁国家として国づくりを進めます。1960年、ひどい不正選挙に怒った民衆の力により辞任します(四.一九革命)。

 1961朴正熙は軍事クーデーターによって政権を握り、1972年「維新」特別宣言によって国会解散、戒厳令などで軍事独裁政治をすすめます。その一方で「漢江の奇跡」と呼ばれる経済発展もしています。約30年実権を握っていましたが、1979年、最後は信頼していた部下によって射殺されます。

 そののち全斗煥は、朴政権の後に民主化を求める「ソウルの春」を潰し、光州事件で市民を弾圧、虐殺した後に大統領になります。『タクシードライバ―』や『弁護人』の時代です。反共を旗印にして、でっち上げで拷問をするなど、軍隊と警察を使って国民を弾圧します。

そして『1987、ある闘いの真実』のように全土、全国民にひろがった怒りの民主化運動によって辞任に追い込まれました。

盧泰愚はその時に全斗煥に変わって「民主化宣言」を出し、軍人出身の最後の大統領になります。

1992年、与党に取り込まれて金泳三は大統領になりました。そして1997年、金大中が大統領になりました。彼は朴正煕の時代から民主化を求めて闘い続けた政治家です。KCIAによって日本から拉致される等、命が危ない時もありましたが、とうとう第15代大統領に当選しました。しかし国家が破綻するような経済危機に直面して、IMF(国際通貨基金)下で新自由主義的経済施策を実施します。現在の格差社会になりました。

そのあとを受け2002年、廬武鉉が大統領になります。彼は『弁護人』モデルとなった人で、軍事独裁政権の後継者を一掃しようとします。しかし国民はこの後、2007年、李明博2012年、朴槿恵独裁政権の後継者である保守政治家を選びました。朴槿恵が大統領になったのは、彼女の父、朴正煕の時代の経済成長を懐かしむ時代の年代が支持したようです。

 自由や民主主義を弾圧してきた軍部と保守派ですが、すべての国民が嫌うわけでもないようです。経済発展、生活の向上が民主化の徹底よりも選択肢の上位にありました。

 しかし2017年、廬武鉉の後継者である文在寅が第18代大統領につきました。

 韓国民の民主化をお求める大闘争の歴史を聞いた思いです。

 

 金さんには、学習会の後の懇親会に来ていただき、もっと深く現在の韓国事情をいろいろな話を聞きました。

 日本の占領下であっても、そこそこの暮らしを保っていた人々はいたわけで、日本を嫌っていません。金さんの祖父母は「日本人はいい人」と評価していたといいます。 

       徴兵期間は現在では2年弱で、だんだん短くなっているようです。金さんは、お化け屋敷のような仕掛け(暗闇の中でいろいろなものが飛び出す)があり、最後の関門は蛇を体に巻き付ける、恐怖を我慢する訓練を受けたそうで、とてもリアルな感じがしました。

彼の大学での専門は、植民地時代の日本語新聞であったのは驚きです。

また、彼が現在教えている大学では、朝鮮の植民地支配を知らない学生も結構いるようです。当然、従軍慰安婦や徴用工等はよくわからない状態です。

 

今回の学習会では、韓国と日本のとてもリアルな市民感情を聞きました。

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上映日は9月18日19日です。詳細は映画サークルのHPをご覧ください。

2020年8月に見た映画

 

i-新聞記者ドキュメント-』『原爆の子』『海辺の映画館』『ラ・ヨローナ~彷徨う女』『マイ・スパイ』『フリークス能力者たち』『グッバイ・リチャード』『ポルトガル、夏の終わり』8本でした。良かったと言えるのは市民映画劇場『i-新聞記者ドキュメント-』ぐらいかなと思いました。『海辺の映画館』は大林監督の遺言みたいなものでした。『原爆の子』は新藤兼人監督の昔の映画です。

i-新聞記者ドキュメント-』

8月例会で、繰り返し見ました。森監督の怒りを感じます。坪井兵輔さんの学習会「伝統メディアの現状」を聞いたことも含めて、権力監視というジャーナリズムの危機はかなり進行しているようです。

組織としてのマスメディアも記者個人も、社会的な役割よりも、市場原理に流されている現状です。彼らが権力、支配層に迎合していることもありますが、資本の論理に対する危機意識が薄れていると感じました。

別途、感想を書いています。

『原爆の子』

 兵庫区のいちばギャラリーで見ました。

 1952年、新藤兼人脚本監督、主演は乙羽信子滝沢修宇野重吉奈良岡朋子等劇団「民藝」の俳優が勢ぞろいで、今見たら豪華な俳優陣です。

 原爆投下後の直接的な映像はなく、広島に生きる被爆者の人生、孤児の様子を描きます。被爆者の老人が働くことも出来ず、ぼろ小屋に住み乞食をしているのは、日本社会に対するものすごい批判だと思いました。

『海辺の映画館』

大林宣彦監督の遺作です。海辺の小さな映画館が閉館する日、老若男女の観客が集まってきます。映画館周辺には映写技師やもぎり嬢、向島から通う女子高生、ヤクザの客等、尾道向島の地形的な魅力と絡まり、大林監督の生まれ故郷の奇妙な味がありました。

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 スクリーンの内と外の枠が外れ、3人の若者が戊辰戦争からアジア太平洋戦争までの戦場をタイムスリップして体験する話を軸に、戦争と平和のイメージの映像がスクリーン一杯に飛び交います。

現代と現代が交錯します。会津戦争の白虎隊、坂本龍馬西郷隆盛、中国戦線、沖縄、原爆投下直前の桜隊等。現代と未来都市の映像。

でも、戦争は国家の犯罪であり国民は犠牲という構図に見えます。それが彼の弱点だと思います。世論、国民感情が戦争に傾いていく姿を描くべきでしょう。

『ラ・ヨローナ~彷徨う女』

 中南米に伝わる怪談と1960年から36年も続き25万人の死者を出したグアテマラの内戦を組み合わせた映画です。

大量虐殺を指揮した将軍エンリケ最高裁で無罪になりますが、国民の怒りは爆発し家の周囲を大群衆が囲み、罵倒と怨嗟、怒りの声を上げています。

エンリケは、神経を病み亡霊を見るようになり、真夜中に突然発砲します。

エンリケの隠し子かもしれない女を除いて使用人は出ていきます。後に来たのは謎を秘めた女アルマです。

夫に捨てられて、子どもを溺死させ、その後に自殺した母親の霊が恨みを持ってさまよう「ラ・ヨローナ伝説」と多くの国民を虐殺した内戦を組み合わせています。

「恨み」ということなのか、エンリケの妻が夢の中で、政府軍に子どもを殺されるシーンが何度も出てきます。その意味がよくわかりませんでした。

『マイ・スパイ』

CIAのエージェントものです。出だしは派手なアクション、銃を構えた大勢に取り囲まれるのを、銃弾よりも早く動いて、全員倒すシーンです。ごつい黒人の大男が監視対象の母娘と親しくなって、以外と言い男じゃないか、と思わせる映画でした。

幼い女の子と大男の組み合わせがジャン・レノ主演の『レオン』のような感じですが、凡庸な映画です。

『フリークス能力者たち』

人類にない超能力を持つ新人類(フリークスと言われる)が生まれる世界、そこでは人類による弾圧がある、と描く映画です。

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超能力者は、SFの定番と言っていいでしょう。昔から(意識を読み取る、伝える)(思った所、時間へ移動する)(思っただけで物を動かす)(未来を知る)(障壁を見通せる)(他の動物の言葉がわかる)(遠くの音が聞こえる)(時間を止める)(変身する)(発火能力)(人を動かす)(怪力)等、魔法と言っていいでしょう。

この映画のアイデアを紹介すると4人の超能力者が登場します。

少女を中心にすると、祖父、父、母がいます。彼女からはすべて血縁ですが、祖父は母の父で、娘の父との血縁はありません。それぞれに能力が違います。人類とは違う力を持つ、という広範囲の意味で超能力者が生まれやすい、という遺伝です。遺伝子によって能力や形態が子孫に伝わるという従来の生物学的ではありません。

それはそういう映画ということで深く考えません。各人の能力を見ていきましょう。

父は自分の周りと、その外との時間の進行速度を変えることができます。彼は、娘の時間を早くして、成長を促進させます。彼女の持つ超能力(赤ん坊の時はどんな能力かわからないが、超能力者だろうと思っている)を早く見つけよう、そしてその能力を隠すすべを教えようとします。

祖父は姿を消すことができる透明人間です。急に透明になってしまいますが、銃で撃たれナイフで切られるので、実体はあるということです。見えなくなるというだけです。

母は少ししか出てきませんが、高速で空を飛ぶ能力を持っているようです。

娘は、他人の意識に働きかけて、自分の思う通りの行動をとらせる能力があります。その影響は時空間を超えます。彼女の母親は遠い山奥に捕われていますが、彼女は母とコンタクトを取ることができて、しかも母の意識を通じて、母の前にいる男を自由に動かします。

これはものすごい能力です。

眼から血が流れ出るということで超能力者を識別する、ようになっています。

映画自体は、超能力によって人間の本質を明らかにするものではありません。そういう意味で、今一ですが、彼らがどんな超能力を持っているか、それどう活用できるか、自分勝手に考えることの方が面白かったです。

『グッバイ・リチャード』

 働き盛りの大学教授があと半年、と余命宣言を受けて、いい人生を送るよりも、好きなことをやってやろうとする映画です。でも意外と小心で、気ままな講義、酒とセックスぐらいです。底の浅い人生観ですが、ジョニー・デップがそんな男を好演しています。

ポルトガル、夏の終わり』

 この映画も主人公が癌で死ぬ前の映画です。イザベル・ユペールが余命わずかの世界的女優を演じます。彼女は家族や友人を呼んで、それぞれに遺言を託そうとしますが、みんな彼女の思いと違います。どうもちぐはぐになります。

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勢ぞろいの写真

 それも仕方がない、という雰囲気で全員が勢ぞろいして浜辺に向かいました。

 人生はそんなものだといえばそんなものです。

イザベル・ユペールが出ているから見ようと思ったのですが、彼女は大女優を演じても似合いません。大女優はドヌーブで十分です。

2020年の稲刈り

 9月6日に妻の実家である養父町餅耕地で、稲刈りの手伝いをしました。恒例のことですが、改めて、いろいろと考えることがありました。

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餅耕地の田、畦に植えているのは丹波黒です。

 今、九州の西面を空前の大きな台風が通り過ぎようとしています。兵庫ではその影響は少ないために、今週の稲刈りとなりました。稲の生育状況からは来週の予定でした。しかし天気予報では「来週末は雨」ということで、急遽、変更した次第です。

 稲作はほとんど機械化されていますが、稲刈りは雨ではできません。稲を刈り取り脱穀するコンバインが、うまく働かないのです。

 ぬかるんだ泥田は走りにくく、刈り取る稲も湿ってくると機械に絡みつきます。稲の育成にも気候の影響も大きいですが、作業もまだまだ天気に左右されます。そして我が家ではまだまだ人力に頼るところも大きいのです。

 稲の刈り取りから袋詰めまでは機械がしてくれますが、その袋を家に運んで乾燥機に入れることや、乾燥機から納戸に収めることなどは人の力です。コンバインの籾袋約30㎏を軽トラまでの短距離も運ぶのはだんだんとつらくなってきました。

 子供の休みと合えば手伝ってもらえますが、天気に左右されるので、仕事を休んでするほどの量でもありません。ですから、今年のように60過ぎの老人ばかりで作業することもあります。

 過疎の村に農繁期になれば子供や孫が来るというのはいい風景です。穀物自給率や農政の問題を除いても、小さな家族農業が継続されることが将来の日本の国土の保全、地域のコミュニティ、災害対策などで重要だと思います。

種苗法

 それと今、国会に諮られようとしている「種苗法」に関心を持ちました。農作物の種にについて著作権を付けようとするもののようです。詳しくはまだ勉強していませんが、気分的に「家族農業を守れ」という考え方の私は反対です。

 反対の意見を「感情的」「事実を曲解」したものというHP「農業とITの未来メディア」https://smartagri-jp.com/agriculture/1406

もあるけれども私は鈴木宣弘先生の意見https://www.jacom.or.jp/column/cat647/を信頼しています。