「日本で一番大切にしたい会社」(あさ出版、坂本光司)

 日本は紛れもなく資本主義社会だ。だからみんなは市場原理を信奉している。しかしその範疇にはまらない人びともいる。この本で紹介されている会社の経営者と従業員は、市場原理は理解しても、それに負けないような人生を打ち立てている。私も応援したいと思った。
 世の中の基準、特に支配的な考え方を振りまく「マスゴミ」(こういいたい気持ちが分かるようになった)は、企業の役割を株主に奉仕することに限定し、それを正当化した。しかしそうではないとこの本、著者は主張する。会社、企業はそこに働く人のものであり、関係者の生活を支え、その地域の人びとの役に立つものという。
 昔からあった「日本的」といわれる「会社」の定義である。しかし現在の主要企業、とりわけ経団連の中枢部にいる多国籍化した大企業は、それを否定した。トヨタ自動車は1兆円の利益を上げ世界有数の大企業になったが、その下請け企業は赤字であり、従業員も正社員以外は「世界的大企業」の恩恵を受けていない。
 いつしか、経済成長の途中から正社員に適応された「日本的経営」(年功序列的給与体系、終身雇用、企業内組合)は変質した。不安定雇用を増大していく日本経済は同時にモラル喪失の社会を作ったと思う。きわめて遺憾だ。
 障がい者が7割の会社「日本理化学工業株式会社」。寒天メーカーで50年間リストラしたことのない「伊那食品工業株式会社」。義肢装具で人を支える、辺鄙なところにある世界的な企業「中村ブレイス株式会社」。北海道にだけしか店を開けない「株式会社柳月」。シャッター外で輝く「杉山フルーツ」。
 それぞれユニークな会社ですが、どれも市場原理の信奉者ではないのです。別の基準で企業活動をしています。このような会社が生き残っていくのは大変です。それを応援していくのは「階級闘争」だと思います。労働者の利益の追求です。それがこのような「良心的経営」の後押しをすると思います。簡単に言えばデューセントワーク(人間的労働)の実践です。
 その2も出ています。その本は貸し出しているので、その本が返ってきたら、そこで紹介されている会社の名前は紹介します。皆さんも応援してください。
 この本のコラムで照会された会社も書いておきます。「株式会社ファンケルスマイル」「ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社」「樹研工業株式会社」「キシ・エンジニアリング株式会社」「株式会社ホリックス」「株式会社アールエフ」「柏屋」「オオゼキ」「メリーチョコレートカムパニー」