年末の総選挙後

自民党の絶望政策
 投票前から自民党の圧勝、「第3極」は維新が伸びる、民主は壊滅という報道がなされていた。そして、そのとおりの結果となった。この現実をどう見て、どのように理解したら良いのか、戸惑っていた。
 年末の新聞を読み、内田先生や五十嵐先生のHPを読んで、考えてみた。そして安倍自民党のデフレ脱却の政策「金融緩和、公共投資、企業投資」で物価上昇2%をめざし、地方公務員給与を国家公務員と同様に削減するという愚策を見て、ばかばかしくなった。
 国民が主に投票の基準としたのは景気対策だと思うが、それが出来る政党として自民党を選んだ。戦後の高度経済成長を作り出した「所得倍増政策」の夢よもう一度ということか。
 断言するが、これでは景気はよくならない、我々の生活は苦しくなる一方。
 内田先生は過激に次のように言っている。
「グローバル企業に利益を上げさせるために労働者の賃金を引き下げ、原発を再稼動して安価な電力を提供し、法人税を引き下げるだろう。公害の規制を緩和し、障壁を撤廃して市場開放もするだろう。無論、そのせいで雇用は失われ、地域経済は崩壊し、歳入は減り、国民国家の解体が促進する」、そのために愛国心とか国防軍とか排外主義的な国民統合を進めようとしている。(12月17日[毎日])
 また12月26日[毎日]の記者の目「賃上げなきインフレは生活直撃」でも、国民生活の壊滅的影響を指摘している。
 自民党は大企業を儲けさせる政策しかない。そこが儲かれば、回りまわって賃金が上がり国民生活が改善するという「トリクルダウン」を、いまだに信奉している。あるいは経済政策はこれしかないのかもしれない。この記事では韓国の実例を引く。昨年「実質で3.6%の経済成長を達成したが。だが、物価上昇分を考慮した実質賃金は2.9%減少した」という。
 経済成長を実現するのは、GDPの6割を占める個人消費を引き上げる、そのためには、給料を上げるのが直接的。日本で金を持っているのは大企業の内部留保260兆円。国民も中小企業にも金はない。
 しかし税金といえば金のないところから搾り取る消費税ばかりを大政党と「マスゴミ」は宣伝した。
 だから自民党はそれに乗っている。自民党景気対策は失敗から学ばない、生活破壊、財政破壊の絶望的政策だ。
政権交代しやすい制度
 小選挙区制度は前回に続いて政権しやすい制度であることが証明された。この制度の見直しの意見も出ているが、選挙前は国会議員削減を比例区でやろうという方向であり、いっそうの小選挙区礼賛だった。
 小選挙区は「政権交代をするたびに可能性をひとつずつ消し去って、政治そのものを劣化させていく」もの、というのが的を射ている。 圧勝した自民党の政策すべてが信任されたものではないが、国会の議席数から言えば「深刻な原発事故があったが、国民は明確に原発から脱却する方向は選択しなかった」となる。
 あるいは憲法九条を変える選択をしたとも見なされる。毎日新聞の調査によれば、自民党の90%、維新の84%、みんなの78%が9条「改正」賛成だ。しかも明確に9条を守ることを掲げた共産党社民党は後退している。
 多数の意見が切り捨てられ、比較多数の政党、その政策が丸ごと選択されたという結果をもたらす。そして国民が選挙で期待したこととは違う、政策が進められる。それが小選挙区だ。
 その政党の一部の政策を支持するという選択が、全面的な選択に変わる。しかも、その一つの政策は国民受けしやすいものであったとしても、そこに至る道は大きな痛みを伴う、ということを理解しないままに、結論だけが支持される。
 さらに言えば、もしかしたら国会議員も深く理解しないままスローガンのように、その政策を唱えれば良いし、責任を追及するマスコミはいないし、次の選挙ではどうなっているかもわからない。急ごしらえの刑事かとはそんなものだと思うが、それが国民受けするようだ。
 むかし「出たい人より出したい人」というスローガンがあったように思うが、それはもうない。
希望の国
 今回の選挙結果を見て、思い浮かんだのは園子温監督の『希望の国』だ。
 詳細はインターネットで調べてほしいし、私の感想は、このブログでも書いている。映画のテーマを簡単に紹介すれば、数年後の日本、再び原発事故が起きた日本を描いた。そこは福島の事故は過去であって、大多数の国民は忘れている、というものだった。
 園子温監督にすれば「まとも」なテーマだし、過激な暴力もない。しかし私は好きになれない映画だった。そのわけが、今回の選挙結果を見てはっきりした。それは「日本人はそこまで馬鹿じゃない」という思いだった。
 でも、今回の選挙結果は原発再稼動に国民は了承したというものだ。その理由は上に記したとおりだ。「日本人はすぐに忘れる。だから東日本大震災福島原発事故を描く」といった園子温の慧眼に敬服するべきだろう。


[続く]