大都市政策における地域主権の確立

 10月22日「経営塾」と称して講演会が行われました。その第1回で、関西学院大学教授の林宜嗣先生の話を聞きました。正直に言ってがっかりです。もう少し自治体の役割を詳細に研究し今後の見通しも話されるのかと思いましたが、過去と現在の分析も雑駁で、将来については問題意識の一端は示したものの明確のビジョンは描けていないという話でした。
 税制調査会委員、地方制度調査会委員、国土審議会特別委員などを務めていますから、体制派の学者であることは間違いありません。そのことは行く前から分かっていましたが、政府のブレーンがどんなことを考えているのかを知りたい、と思って参加しました。
 地方自治体が抱える課題、市民の生活実態をどの程度知っているのか、ちょっと首を傾げたくなるような話です。
 地方制度調査会で大都市まで議論が進んでいないことや、総務省の官僚もこれでいいのかと思っているという裏話は聞きましたが、財界の意向に沿った自治体政策であると思います。小規模自治体の合併、道州制などばかりで、団体自治と住民自治の充実のためには何が重要かなどは議論していないようです。
 基本的には新自由主義者であるようですが、さすがに首都を変えて活性化させるとか東京1極集中をもっと進めるとかはいえません。それに変わるものも提示できないという行き詰まりです。
 林先生の話のどこで、彼が新自由主義者と決め付けるのかといえば、自治体の大学の費用が税金で補填されているから、納税者と地域外の学生で齟齬がある、だから学費を上げたらいい、ということを言ったときです。義務教育、高等教育を実施する責任は社会全体にあると、私は思っていますが、新自由主義者は、高学歴による受益を受ける本人の負担を強調しています。
 貧しい社会こそが、彼らの言う競争原理の働く社会です。地方自治はそんな社会をめざすことではない、と思いますから、まったく不愉快な話でした。
 でもそんな中でも「大阪都構想」を批判し「地方分権に逆行する」といいました。あるいは「都市の超高層マンションにいつまでも人が住むという保証はない」「事前に予測して政策を作る、規制する」といったのは、「おっと以外」でした。
 しかし郊外の団地開発は、税金をつぎ込むが住民は受益者として利益を還元していないようなことを言いました。これは神戸市政を研究していないな、と思わざるを得ませんでした。
 研修所はもう少し人選するべきだし、しゃべる内容にも注文が必要でしょう。しかし聞くほうもあまり真剣みが感じられません。職員一般の研修ではなく管理職を対象にしているようですが、メモを取っている人は少なかったようです。
 映画サークルの例会学習会のほうが熱があるなと思いました。