「相棒 劇場版Ⅱ」

 24日に見ました。
 テレビの「相棒」もよく見ています。水曜日は色々と入っているのですがビデオに録画して貰っています。ファンですね。
 だいたい刑事ものは好きです。広い意味でのミステリーの範疇です。その中でも「相棒」は良質だと思います。
 それはなぜか。世の中の矛盾をテーマにしているからです。ホームレスとか、貧困層の犯罪には社会に在り様を差し込んでいます。権力者や富裕層の犯罪にはエゴイズムを見せます。
 前の劇場版は「自己責任」に踊ったマスコミと、その裏にいる権力者を見せました。映画は長い分ちょっと冗漫でしたが、話や人間像を二転三転させました。
 今回は公安という権力の裏に寄生する、いわば特高警察の後継者みたいなものたちの犯罪と、警察省を夢見る高級官僚を俎上に上げています。それはとてもいいと思います。
 しかしネタにする事件がちょっと無難な外国人組織にしているところが気に入りません。外事課ではなく日本共産党平和団体などを監視する組織を焦点にすれば、凄みが出たと思います。そこまでいかなくとも、日本の組織犯罪であるとか、企業犯罪、反権力に対する政治的テロなど、もっと深層に迫るネタがあるはずです。あまりに警察官僚の上層部の犯罪とした分、「これはフィクションですよ」ということを強調しています。
 だから佐々木譲などが描く、例えば「警官の血」のような警察組織の中枢にある警察犯罪のリアリティに負けています。
視点はいいと思う
 警察庁も警視庁も東大法学部卒の国家公務員キャリア組みが牛耳っていること、国民を見るのではなく、国家の秩序を自分たちの使命と思っている、と批判します。それに対して第一線の警察官の純粋さが強調されます。
 そうです。彼らは自分の命をかけて働いています。
 警視庁幹部全員を人質にとるという、奇想天外な始まりはいいのですが、それがあまりにもあっさり、しかも深い策略もなく出来てしまいます。外国映画でもそういう犯罪がとんとんと行くように描きますが、一見するとかなりうまい計略(後でじっくり考えると、おかしいところもあるが)で、盲点を突くみたいなことがあります。
 幹部連中を演じるのは、彼ら年齢が高いこともあり、それぞれ個性的な役者ですから、そこは見せます。
 そして犯人はあっさり死ぬものの、そこから追跡が始まるという、うまい構成です。例によって右京さんの観察眼と推理が展開して犯人像を作っていきます。米沢さんの鑑識からの証拠の出し方も面白い。さらに神戸もかなりがんばります。
 ですから全体的に面白くしようとがんばっています。しかし2時間持たし、しかも面白くするには、レギュラー以外の人間像の彫りこみが必要でしょう。それが物足りないのです。犯人像や「真の犯人」である警察官僚の人間性(歪であっても人間です)が書き足りないと思います。
 きっと時間をかけた脚本の練りが足りないのでしょう。ですが、この映画のように、テレビで好評で、ある程度あたることが予想される映画を作るときは、脚本に予算と時間をつぎ込んでほしいものです。